2012.07.12 のニュース
原油の上昇で業績回復のチャンス ―4月~6月の不振を挽回へー
原油価格は値上がり局面となってきた。4月以降、原油価格は値下がりを続けており、仕切価格も連動して値下がりしていたが、6日からガソリンは2円/Lの値上がりとなった。販売業者は、値下げ局面からユーザー転嫁という難しい状況となるが、業績の回復を狙うチャンスとなる。元売も4月~6月は原油価格の急落で在庫評価損が発生、赤字が見込まれているが、7月入りで一転して原油価格が高騰すれば在庫評価益が発生するため、早計であるが黒字転換が見込まれてきた。
原油価格は、3月のWTIが平均で106ドル/バーレル、ドバイが123ドルであったものが、4月のWTIが103ドル、5月は95ドル、6月には82ドルに下落した。6月末には77ドルまで落ち込んだが、29日に7ドルの値上がり、さらに7月3日には4ドルの値上がりとなり、短時間で10ドル急騰し87ドルとなった。急騰の反動で値下がりもあったが、足元は86ドルとなっている。
日本エネルギー経済研究所は2日に今年下期(7月~12月)の原油価格の見通しを発表したが、WTIを85ドル、ドバイが98ドル、ブレントを100ドルと予測している。昨年末に発表した際、WTIは100ドルとしていたため下方修正となる。このように、原油価格の見通しが難しいことを実証したことになるが、今後の見通しとなると、世界の景気動向、地政学的リスク、OPECの原油生産量などが絡むため難しい。
3月時点では、原油価格は今後も値上がりするとの見方も多く、ガソリン市況は158円/L(週動向調査)に値上がり、160円台乗せも現実味を帯びていた。ガソリン高が
続くと景気に悪影響が出ると懸念する見方も出ていたが、4月に入ると原油価格が下落したため、ガソリン市況も急落した。
元売の24年度の決算見通しでは、ドバイを110ドルと設定しており、足元では値下がりして97~98ドルであるため、予測を大幅に下回っている。3月には値上がりでドバイは120ドル台で推移しており、23年度決算は、原油価格の高騰で在庫評価益が発生して増益の好決算となった。
しかし、24年度に入り、4月~6月の決算は、一転して原油が急落したため大幅な在庫評価損が発生し赤字となる。石油業界の業績は、企業努力では対応できない原油価格、為替という外的要因に左右される。だが、原油価格が急騰すれば23年度決算のように在庫評価益が発生して増益の好決算となるため長い目でみれば相殺される。原油価格が上昇時は、在庫評価益が発生するとともに、需給も締まり、石油製品価格が値上がりマージンも確保される。さらに石油開発部門は、確実に増益となるため好決算となる。一方、販売業者も、製品価格の値上がり分が未転嫁となりマージンが減少するケースもあるが、大勢は原油価格の値上がり時は利益が確保できる。
しかし、4月~6月のように原油価格が下落局面となると、在庫評価損が発生し、製品価格は、原油価格の値下げを先取りしてコスト減少分よりも値下がりするためマージンは減少する。さらに原油価格が下落すると、石油開発部門は直ちに減益要因が加算されるため、赤字となる。だが、7月~9月は原油価格の値上がりで黒字回復が見込める状況となってきた。