2013.04.12 のニュース
地熱開発に石油業界からも参画-国の支援策、買取制度の導入で-
経済産業省は、再生可能エネルギーの開発の目玉策として地熱開発に取り組んでいるが、理解の促進と地域との共生を図るため、20日に札幌市のルネッサンスサッポロホテルに於いて「地熟発電シンポジウム」を開催する。地熱発電は、地下に掘削した抗井(深度1500㍍~3000㍍)から噴出する天然蒸気でタービンを廻して発電するもので、地熱開発業者と発電所(電力会社)が一体となり運営する事業である。従来は開発業者が蒸気を電力会社に売り、電力会社が発電して電気料金で回収していたが、電力自由化により固定買取制度が実施と国の支援策が導入されるため、石油業界も地熱開発に取り組むこととなった。
地熱開発については、昨年審議したエネルギー基本計画の見直しにおいて、安定した電源として位置付けられ開発促進することとなった。昨年度予算で開発地点調査費が確保されたこともあり、基礎的な調査が実施されている。
地元との共生を図ったシンポジウムは昨年、福島で開催されており、今回の札幌は2回目となる。今回は、温泉業者、学者、自然環境の保護団体、地熱開発事業者などが参加、来賓として地熱普及議員連盟代表の二階俊博氏、松あきら議員、高橋はるみ北海道知事らが出席、基調講演を高原資源エネルギー庁長官が行なう。
地熱開発のメリットは、①発電時のCO2排出はゼロであり、環境に優しい、②他の再生可能エネルギーに比べ設備利用率は約70%と格段に高い(太陽光発電は12%)、③日本は世界有数の地熱資源の保有国であるなどの点が指摘されるが、開発地域が国立公園であるなど規制が多く、また、開発コストが膨大となり、調査、探鉱、開発、発電までに約10年もかかる点から開発は進まず、これまで実質的には中断されていた。
地熱開発で問題となるのは、その対象地域が温泉観光地であり、温泉への影響が懸念されるため地元の温泉業者からの反対が多い。また、国立公園などの場合は熱水混じりの蒸気が噴出するため、景観、環境保全の立場から地熱発電所の建設に反対されるケースが多く、開発に着手することが難しい。そのため自然公園法の改正による規制緩和(環境省)などの施策が講じられている。
地熱開発の現状は、国内では、現在17ヵ所の地熱発電所で出力約52万kW規模(原発一基はIoo万kW)となっており、電源構成では0・3%にとどまっている。資源量は約2340万kWを保有し世界第3位にあるが、開発が遅れている。
石油業界では、出光興産が大分に保有する「出光大分地熱」が唯一、稼働している。石油資源開発も鹿児島で「山川地熱」を運営していたが、採算に合わないため九州電力に売却した。しかし、今回の規制緩和、国の支援策を受けて、石油業界では石油資源開発、国際石油開発帝石、三井石油開発、出光興産.JX日鉱日石開発などが参画する方向にある。
政府は平成25年度の予算措置として、①地熱開発理解促進事業支援補助金(地域との共生目的)で28億円(新規)、②地熱資源開発調査事業(開発の促進)で75億円(前年が90・5億円)、③地熱資源探査出資事業で80億円(60億円)、④地熱発電技術研究開発事業で9・5億円(新規)を確保している。