2013.07.11 のニュース
生産過剰と小売疲弊との因果
クルマが生み出される生産現場。そこには安全操業を第一に、競合他社に負けないよう、新たな意匠や工夫を凝らし、なおコストを下げようとする姿がある。世界中のメーカーがしのぎを削る厳しい舞台だ。自動車販売店・カーディーラーは、純正の物流・商流を経たクルマを仕入れ、自らの値付けで、信頼に足るメーカーの企業努力の結晶であるクルマを、自信を持ってお客様にセールスする。
その小売・販売最前線では、同系列を含めて、セールスがしのぎを削る。金融・実質値引きを含む各種のメーカー支援に加えて、ディーラーごとの販売戦略・味付けが施される。メーカーやクルマ本体が有する魅力とともに、アフターサービスを含むデーラーが培った顧客との信頼関係が問われる世界だ。
そのクルマが見通し通りに売れなかった事態を想定してみよう。売れると想定して投入された装置は、その稼働を低下させるだろう。販売店などで滞留した在庫をさばくために、各種インセンティブを強化して、まず多過ぎる在庫を少なくしようとするだろう。そこで要する経費は、ほぼすべてメーカー側が負担する構図となる。販売店側に出血を求める事態はあり得ない。
差別化できない商品とはいえ、石油では、正規ルートで売れない症状が出ると、系列店が出血してしまう構図が常態化している。しかも大幅値引きされた余剰玉が、系列SSと完全に競合するライバルPB店に流れて行く。系列店には、正価=高値品を流す。しかも、各地にメーカー直営店があり、中には、積極的に安売り競争の最速・最前線に立とうというケースすらある。
クルマよりも石油に似ている業態として、鉄やセメント、紙などがある。高炉メーカーが銑鉄を過剰生産した結果、鉄鋼の卸や製品加工業者、ましてや製品販売店がそのマイナスを負うわけはない。鉄やセメントが有り余った結果、出血するのはメーカー自身だ。これらの市場では、まず規格に合った鉄、セメント、紙というパッケージ・刻印された商品があるのであって、余剰商品市場に転売されたとしても、どこまでもそのメーカー名が付いて回る。
市場スケールよりも過剰に作ってしまった場合、その負は、完全にメーカー側に属する。石油市場における健全化は、こうした構造に転換させることが必須のように見える。