2013.11.25 のニュース
不安と不快に包まれた卸下げ
産油国の地下には原油があり、その原油の行き先として日本があり、危険な水域を航行することもある巨大なタンカー群を用船する石油元売がある。元売の製油所の先に船や貨車を経由して油槽所があり、タンクローリーを経由してSSがある。SSの先には、ガソリンを必要とされるお客様がおられる。これを総称して、原油・石油・ガソリンの長大なサプライチェーンと呼ぶ。
このサプライチェーンを維持するために、国が大きな力を注ぎ、元売もSSも、万全を期したいという思いで、精一杯の努力を傾注し続けている。すべては過疎地のお客様視点で、石油が必要なお客様への安定供給機能を維持するために。
平時においては、石油に向けるお客様の最大関心事は、価格だ。100円灯油がスタート値となった北海道の懇談会でも、そのことは明白だ。その石油の価格を左右するのは、元売なら原油価格と需給であり、そこで卸価格は値ごろ感を探り、市場で洗礼を受けて、特約店に受け入れられるものであろう。
ところが、火曜に通知されたJX先行は、なにによって、その効力が担保されているのだろうか。大幅値下がりだから、粗利の低下に苛まれていた系列特約店には歓迎されるだろうが、10月の大幅値上げに続くこの大変動は、きな臭い空気をまとっている。ガソリンの6・4円の変動は、年換算なら3520億円の値下げに相当する。シェア34%のJXでは年1200億円の収益を吐き出すことに等しい。なにより元売の発する週仕切り変動が、10月以降、なにを指標として、その上下動が発生したのかが完全に不明だ。そしてその焦点が、ガソリンにのみ大きく偏重して適用されているように見えることが恐ろしい。透明度ゼロの汚泥に入り込んだような不快指数だ。
元売の発する価格シグナルは、SSを通じてのお客様へのメッセージでもある。自身の収益基盤の修正のための大幅値上げ、そのように我々は10月に聞いた。そして長い沈黙。そして、今度は前回の上げに倍する出血シグナルの大音響。石油における生産、物流、SSネットワークなど、そのすべてにおいて、ダントツの経営資源を有する元売だけに、この大音響は、否応なく全元売を巻き込んでいくだろう。エネルギー・資源・素材の未来を切り開く理念で誕生した大会社であるだけに、王道へ回帰してほしい。