日刊ニュース

2014.09.01 のニュース

原油価格は、決められない

原油高が国内石油業界を苦しめる展開が続いている。先週半ば、原油中東産の有力指標であるドバイ原油が1100㌦台を割り、関心を集めたが、先週末には再び3桁台を回復した。中東産と連動性の高い欧州ブレント原油も同様に101・56㌦まで値下がりしたが、その後じわり上昇した。原油は記録的な高値水準で安定化している。
 本来価格を決めるべきファンダメンタルズだと、生産は十分で需要は停滞気味なので原油価格は弱含みとの推測もある。現状はそうした需給の緩みに対して、中東などで相次ぐ地政学リスクの発生が緊張感を与え、下支えしている格好といわれる。中東は依然、紛争の中にあり、その現実は原油が単なるコモディティでないことを改めて認識させる。
 一方、今回の中東産、欧ブレントの下落については、地政学リスクが原油安を招いた珍しいケースとみる専門家もいる。下落の主要因はリビア産原油の輸出再開による需給緩和と欧州経済の低迷による需要減とされる。欧州経済の足を引っ張るのはウクライナ問題という地政学リスクである。EUの対ロシア制裁が欧州経済に負のインパクトを与えた構図だ。日本から遠く離れた欧州のリスクが日本経済・社会の生命線を担う中東産原油に影響を与えている。
 世界的に暖房需要が高まる下期は通常、需給がタイト化するとみられる。現状、下期における元売各社の原油価格の予想値は105~106㌦水準、為替がこれまでと同水準であれば、上期同様の原油高が今後も続くことになる。さらに詳しくみると、大きな変動要素が2点、指摘されている。1つは上昇要因で、イラク情勢のさらなる不安定化と中東周辺諸国への波及である。そして、もう1つが下落要因で、中国をはじめとする新興国経済のさらなる減速による需要減である。
 いずれも予測が難しく、しかも日本だけでは解決不可能な世界的な難問題だが、原油が乱高下すれば大きなダメージを受けることは間違いない。いまもって、国内石油業界はそうした複雑で不安定な要素のうえにさながら浮いているような状態にある。原油価格は我々自身が決めることはできない。だからこそ、国内において適正な価格水準で採算販売することが大事なのである。政策的構造不況業種といわれる中、ガソリン口銭を投げ出すような大幅な値下げ競争をしている余裕はない。

提供元:全国石油商業組合連合会
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-17-14石油会館
TEL:03-3593-5751
FAX:03-5511-8870
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE