2015.03.10 のニュース
災害対応力を堅持するために
東日本大震災から4年。未曽有の大災害は「エネルギーの安定供給」が経済・社会の原動力であることを浮き彫りにした。そして、エネルギーの大宗たる石油業に携わる我々は、厳しい経営環境の中、各社・各SS・各人が精一杯の対応や対策に努めてきた。地震大国で基幹産業を担う者として、幾多の犠牲や苦難から得た大事な教訓を今後も着実に生かしていく必要がある。ただ、エネルギー問題の重要性が「消費者の記憶から薄れてきた」「原発の是非に偏り過ぎ」とも言われている。当業者として、大いに気がかりだ。
3・11発生以降、石油業界の周辺ではどんな事態が起きていたか。本紙の見出しから振り返ると、「東北・北関東8県103市区町村で震度6以上の地域に2853SS」(2011年3月14日付)、「物流停滞、SS在庫切れ、帰宅困難者発生、給油待ちに長蛇の車列。こうした中、不眠不休で復旧に全力」(16日)、「スタッフ絶え間なく奮闘」「不要不急のガソリン給油自粛要請ポスターを提供」(18日)、「拡がる安定供給と支援の輪」(23日付)、「被災者のために、被災SS懸命」「首都圏で供給回復へ」(25日)、「東北の主要都市でも徐々に給油渋滞が緩和」「営業再開するSS多数」(4月4日)、「自社ローリー駆り被災地の避難所に灯油を寄贈」(6日)。震災後の一端を1ヵ月追っただけでも、石油製品の安定供給に尽くした業界人の姿が思い起こされる。この努力は、石油製品を求めるユーザーや公的機関などの要請に応えたい一心にあった。
大震災後、石油の重要性が広く再認識され、しばらくの間、一般消費者は満タン給油を励行したが、いまはどうか。平時の給油スキームでは災害時の安定供給がままならないと認識した行政機関は石油組合との協定締結を広げたが、他方、例えば官公需適格組合の受注機会は実際の成果としてどれだけ増えたのか。
近年、非常事態は地震時に限らず、様々な自然災害が相次いでいる。災害時協定の発動要件にならない事例のほうが多い。いざ、なにかが起きれば地元業者が頼られる。多くの組合員がそう感じ、経験してきた。「平時はよその安売り店。万一の際はよろしく」。これにはもう無理がある。地場中小業者は窮している。理想と理屈だけで万全の安定供給体制を堅持するのは至難だ。