2015.04.08 のニュース
災害時の支えは最寄りのSS
平時と災害時の境目を予測することは難しい。天災は忘れたころにやってくると言う。3・11から4年、あの被災をまだ忘れることはあるまいが、巨大地震は突然、日常生活に襲いかかる。災害時は燃料供給を含め様々なものが機能停止になる。その中にあっても真っ先に市民生活のため、厳しい任務にあたるのが地元の警察署や消防署の方々である。
先般、神奈川県警が実施した一般競争入札の仕様書には災害時に関する記載が入っていないことがわかった。地元SSからは驚きの声が上がる。首都圏への直下型地震の来襲も指摘される中、災害時対応を考えていないはずはないが、実際、発生した場合どこで給油するのだろうか。
まして今回、同県警が採用したのは県外大手商社が出す元売・発券店値付けカードによる給油体制だ。同カードは対象エリアに自前のSSがなくても、同系列他店のSSに代行給油させることで燃料供給ができる仕組みだ。その一方、発券店と代行する個々のSSとの関係は薄く、供給ネットワークとして強靭とは言い難い面がある。3・11の際、都心では発券店カード客と代行SSの間で円滑な給油行為ができなかった例があったとも聞く。代行給油するSSの中には売上げもたたない発券店カード客を自分のお客様と感じないところも依然多い。
2008年には公正取引委員会が発券店カードについて見解を示している。代行給油手数料を一律に定め、代行を希望しない事業者にも給油することを余儀なくさせ、不当に不利益を与えている疑い(優越的な地位の濫用)を審査した結果、「S元売(当時)からカードシステムについて一括加入方式を変更し、今後はSSを運営する事業者が発券店カードを取り扱うか否かを任意に選択できるようにするとの申し出があった」と評価しながらも、「引き続き、発券店カード制度・運用状況を注視していく」とした。平時においてさえその問題点が100%解消されたとは言えない仕組みなのだ。
地元警察署の中には3・11の被災の中、緊急車両への給油を必死でつないだのは地元SSであることを知っているところもあるはずだ。供給不安による焦燥、供給途絶による大混乱が発生した場合その困難に直面するのは実際に緊急車両を出動させる現場である。災害時そうした現場を支えるのは、カードではなく最寄りの地元SSだと考える。