2015.04.16 のニュース
すぐそこに代行カードの恐怖
地域特約店が安定供給を第一義に供給責任を果たしてきた法人顧客が、突然、他社に一網打尽にされ、代行給油と化した。この方程式を準用すると、かつて経験のない大波がやってくる懸念がある。利するのは勝者とその系列元売のみ、地域の系列SSには代行手数料が残るが、系列外はゼロになる。そんな構図だ。
あふれ返る広告宣伝費と羨望の福利厚生を組み込んだ総括原価方式。さらには地域独占という強固な経営基盤のもとで、地域経済の主宰者であった電力や都市ガス大手だが、その牙城を主戦場とする全面自由化が始まる。通信や電機、自動車、商社、そして石油元売やLPガス大手などが、自らの商品やサービスと電力・ガスを融合させた新サービスの提供に向けて準備を進めている。
10電力を頂点とする電力業界は、2016年に約5200万世帯向けの小売りが全面自由化、送配電部門の20年の法的分離で完全自由化となる。最大手の東京電力は1700万世帯を擁する。大手もあるが実は200社強が割拠する都市ガス業界も、17年の小売自由化で地域独占が崩れる。2700万世帯という家庭向けが開放され、22年には導管部門の法的分離が予定されている。業界最大手の東京ガスは990万世帯。
この東電1700万世帯と東ガス990万世帯が、2つのエネルギーを1パッケージ化して売り込むエネルギー自由化の草刈場となる構図がイメージされている。
石油元売の大勢は、過去からのC重油、LNG、LPG、石炭などの燃料供給関係に加え、電力や都市ガスとの火力発電所や基地の共同運用へと関係を深め、なおかつ小売自由化をにらんで新電力事業者としても届け出ている。このほかに単独で火力や太陽、風力、地熱、バイオ発電を行う発電事業者でもある。そうした経営資源の方向性は、全面的に開かれる電力小売市場をターゲットに始動し、その延長線上に都市ガス小売市場を見据える。石油販売業者や燃料商社の一部も、この新電力事業者に名を連ねている。
冒頭の発券店値付け代行カードの仕組みを用いて、電力とガスとともに、「ガソリン」までも「代行」マジックで、3エネルギー1パッケージ化されてしまう懸念はないか。SSの口銭商売が代行商売となってしまう恐れはないか。不用意に拡販してしまった負の遺産を、早急に整理整頓する必要がある。