2015.06.22 のニュース
公正かつ透明な「卸」情報
国内の製品卸市場が変調をきたしている。2015年に入って、情報プロバイダーが提供するガソリン卸価格情報が、経済合理性からは起こり得ない「海上高・陸上安」にほとんど張り付いた状況が続いている。
SSに至るガソリンの流通ルートは、製油所-海上出荷・製品タンカー-油槽所-陸上出荷・タンクローリー-SSというのが王道で、コスト面では1~2円の「海上安・陸上高」が生じる。原油相場の乱高下などにより、「海上高・陸上安」が一過性で生じることはあっても、これほど長い期間、「海上高・陸上安」が続いている事態は極めて異例だ。しかもその値差の近況は3円前後となっているから、経済合理性から見れば、5円近い逆ザヤが生じていることになる。
「海上高・陸上安」は、需給に関する「供給過剰」、SS小売市場における「売れ行き不振」のサインでもあるが、ここのところのガソリン在庫は近年で最少レベルを持続しており、近況も180万㌔㍑を割り込み、この時期としては過去10年間で最少レベルだ。しかも、国内よりも良好なマージンが期待できる海外高が製品輸出を下支えすることから、当面は在庫増は起こり得ない。
ここで素朴な疑問が沸き起こる。本当にその価格情報は、多くの海上・陸上取引をベンチマークしているのだろうか。その数字は正しいのだろうか。
ガソリン小売価格の変動は、1円に満たないわずかな上下動に毎週、多くの関心が寄せられているように、国民的関心事項である。その大元を構成し、小売価格の変動に直結する卸売価格情報ソースは、大きな経済的基盤でもある。卸市場が変調をきたしているのか、卸価格情報機関の情報収集基盤が脆弱になっているのか。これまでもその数字に疑問が呈されることはあったが、ここまで歪んだ数字が長きにわたって続出すると、その信憑性が大きく揺らいでいる、とされてもやむを得まい。
18日から始まった総合エネ調分科会で議論された中間報告案では、公正かつ透明な市場形成についての今後の課題として、「調査手法の信頼性を確保し、商品先物市場の活性化等の方法を検討するなど、石油製品価格決定メカニズムの透明化・適正化を進めていく」としている。公正かつ透明な「卸」市場は、公正な小売市場の基盤である。議論で終わらない実践を期待している。