2015.06.29 のニュース
外来種再びの影響と行方
新規参入とは、自由化政策における象徴的な現象だが、石油販売業界に対してまた新たな外来種がやってきた。山形県上山市に米国系の会員制倉庫型量販店コストコホールセールジャパンが国内初のSSをオープンさせた。同社はこの後さらに富山県、岐阜県でもSS併設型店舗を展開する計画だ。
注目のレギュラーガソリンのオープン価格は133円だったが、すでに周辺SSと値下げ競争を始めていると聞く。現在、陸上業転は製油所渡しで117~8円で、これに消費税と上山市の立地を考えた物流費を加算すると、コストコSSのマージン幅は予想通りだが2~3円と想定される。同社は完全会員制で通常4千円程度の年間会員料が必要なため単純比較できないが、同様に異業種ホームセンター大手・ジョイフル本田が北関東で展開するSSが現在135円であることを考えると、やや安値水準といえる。「コストコは年間会員料を主な収益源にするとも聞く。そうであれば、1つ1つの商品は原価で販売することも可能ではないか。こうした商法に対し、不当廉売の適用をどう考えていくのか」と販売業者から危機感を示す声も上る。
石油販売業界はこれまでも幾度か外来種の参入を経験してきた。1996年にダイエーが丸紅と共同出資のDMガスステーションを設立し、初のスーパーマーケット併設SSをつくった。第1号店が出た長野県松本市を皮切りに各地で市況混乱を発生させたが、現在ダイエーはイオン、DMガスも三菱商事などの系統へと資本形態が変わっている。
そのイオンも三菱商事石油などと共同でショッピングセンター(SC)併設型SSを展開し、こちらは現在も60SS超が存在する。一方、外資系メジャーBPジャパンは群馬県のベイシアグループとSC併設型を21SS展開したものの、08年に国内SS事業から撤退した。
異業種=超安値の印象を最も植えつけたのはジョイフル本田だ。8SSとも関東圏内に限定されるが、その廉売的な価格設定は多大な影響を与えた。人知れず、多くの中小零細SSが姿を消した。ただ最近、ジョイフル本田も徐々に販売数量を落としていると聞く。外来種も成否は様々で、今後の行方は未知数だが、出店時の瞬間風速的な影響は大きく、しかもいまやガソリン内需減の中である。周辺在来種となる地元SSのストレスの大きさは計り知れない。