2015.07.02 のニュース
平時の配慮が必要な理由
東日本大震災発生後、被災地で最も必要に迫られたのが燃料である。救助活動を行う消防車や救急車の燃料、病院など緊急時施設の発電用燃料。電気やガスなどライフラインのほとんどがストップしている中、避難所の暖房も燃料に頼らざるを得ない。情報を伝えるテレビ局や電話会社なども自家発電用の燃料確保に奔走した。
このような災害時にこそ活動しなければならない緊急車両や緊急時施設の多くが、普段は競争入札で燃料を調達している。震災後、ある警察署が納入契約を結んでいた落札業者に連絡したが、その業者は被害を受けたわけではないのに店を閉め連絡も取れない。途方に暮れた警察署が頼ったのが石油組合だった。
同じような事情から東日本一帯の石油組合に、地方公共団体や緊急施設から多数の燃料供給依頼が殺到した。連絡を受けた石油組合は、組合員各社と連携して必要な燃料がどこにどれだけあるのか探し出し、届ける作業を続けた。福島や宮城、岩手の石油組合などは事務所に職員が泊まり込んで県や市町村、警察・消防などからの要請に応じた。こうした経験が地方公共団体から石油組合への災害協定締結の要請につながった。
しかし、燃料供給が安定すると再び燃料調達は競争入札に戻った。前述の警察署は、震災直後に連絡が取れなかった契約業者が再び安値落札した。災害協定を締結したといっても、普段の燃料調達は競争入札で、という使い分けである。必死に奔走して燃料供給に努めた石油組合などからは「事実上、協定は、災害時にだけ組合や組合員に供給責任を押し付けることになり、そのあり方を見直す必要がある」との声が上がった。
そのような声を受けて災害協定書の中に、平時にも地元事業者からの分離・分割発注に努めるという主旨が記入されたり、定期的に提出される組合員名簿を基に指名競争入札を行うようにしようという配慮も見られるようになった。
自民党の石油流通問題議員連盟(野田毅会長)の幹部が宮沢経済産業大臣と高市総務大臣を訪問し、官公需の受注に関し災害協定を締結した石油組合への配慮を要請したが、まさにこのような平時における配慮を求めたものである。石油製品は災害時に最も必要とされる物資である。だからこそ地方公共団体は、石油について普段から特別に配慮する必要があることを理解してもらいたい。