2015.08.04 のニュース
経営統合への期待と不安
先週の出光興産と昭和シェル石油の統合に向けた記者発表を受けて、「ようやく固まったか」というのが、多くの石油業界関係者の第一印象だろう。昨年12月の報道以来、石油業界では両社と両社以外を含めた業界再編に関する様々な観測が乱れ飛び、その行方が注目されてきた。本格統合まで時間がかかりそうだが、ひとまず流れが見えたことになる。
両社が統合を決断した最大の理由が、中長期的な需要減や過剰設備・過当競争を原因とする低収益体質など業界の構造的課題に対処するためとしている。石油販売業界がまず注目するのはまさに国内需給がどうなるのかである。
記者会見で出光の月岡隆社長は「過当競争の中での需給改善の取り組みが業界に与えられた大きな課題」と述べ、「今回の統合で大手4社体制となる。プレイヤーが少なくなっていく中で供給過剰に対する製品価格の認識がしっかりと理解され、各社が生産を調整していく形で公正・透明なマーケットをベースに動いていくような時代がそこまで来ているのではないか」と発言した。
供給過剰による業転玉の大量流通と市場混乱で、石油販売業界は低マージンでの販売を余儀なくされている。製品を売っても利益を生み出さなければ、卸元である元売にも利益は還元されない。石油販売業界はこの悪循環を断ち切るため、需給適正化を強く訴え、資源エネルギー庁もエネルギー供給構造高度化法や産業競争力強化法第50条を適用して精製能力の削減を促してきた。月岡社長の需給改善に取り組む主旨の発言については大いに歓迎するところで、それが実現することを期待したい。
一方、両社系列の特約店、販売店が特に関心を持っているのが、経営統合後の販売体制についてである。会見で昭シェルの亀岡剛社長は「お互い対等の立場で経営統合を目指しましょう。お互いの社員、特約店が活躍できる形を作りましょう、ということで合意に至った」と述べ、月岡社長も「両ブランドを維持していくことを基本的な考えとしている」と発言している。
元売同士の経営統合は、油槽所の統廃合や供給コストの削減など、重複部分の削減で効果を発揮するだろう。そういう意味では元売としての体質は強化されるはずだ。両社の系列店は、今回の統合が決して強権を揮う「元売だけの体質強化」にならないことを願っているのである。