2015.08.20 のニュース
防災訓練への参加が増える意味
都道府県などが行う合同防災訓練に石油組合が参加する事例が増加している。昨年度の11組合から今年度は16組合に増えた。その前までは東京都などが首都直下型地震を想定して行っていた防災訓練や帰宅訓練に、東京石商が参加していたりしたケースはあるものの、ほかではあまり石油の重要性が認識されていなかったのか、自治体側から声がかからないのが実情だった。
これが変わったのはやはり2011年の東日本大震災の経験からである。電気、ガスなどのライフラインがストップする中で、災害対応のためには石油製品とそれを供給するSSが唯一の分散・独立型のエネルギーであることを被災県は痛烈に認識した。さらに製油所の被災や稼働停止でガソリンなどが品薄になり、東日本地域全体で人々がガソリンや灯油の確保に右往左往し、災害時の石油の重要さを体験した。
大規模災害になればなるほど消防車や救急車、パトカーなどの緊急車両の活動は活発になる。電線が倒れて停電になれば、病院や浄水場など公的施設の自家発電のための燃料が必要になる。ガソリンスタンドに車の長い列ができた光景はテレビで繰り返し報道されたし、その後の検証でも、緊急車両や公的施設の燃料調達が困難を極めたことが明らかになったことで、西日本の自治体でも災害時の燃料調達対策を検討するようになった。
地震を想定した防災訓練では、火災訓練、避難訓練、救助訓練などが行われるが、これに加えて中核SSでの緊急車両などへの優先給油訓練、小口配送拠点からの配送訓練、さらには、昨年宮城県で行われたように自衛隊ローリーで小口配送拠点から避難所までの配送訓練などが行われている。
地震が発生しても稼働が可能な中核SSなどには多くのドライバーが殺到する。実はその行列の中で緊急車両に優先供給するのは簡単ではない。東日本大震災時にも多くのトラブルが発生しており、スタッフが暴力を振るわれたケースもあるほどだ。こうした経験を基に円滑に緊急車両に燃料供給ができるようにする訓練は必要不可欠なのである。
この防災訓練への石油組合の参加には資源エネルギー庁の支援もあるが、地方自治体そのものが、災害時の石油の重要性を理解し始めたということでもある。それが「地元のSSを大事にしなければならない」という認識に繋がることを期待する。