日刊ニュース

2015.09.29 のニュース

脱税阻止は連携の賜物

総額で9千億円超にもおよぶ税収を47都道府県の自治体にもたらす軽油引取税。その軽油引取税を取り巻く環境が、この十数年で大きく様変わりしつつある。
 軽油は、灯油やA重油と成分が極めて近い一方で高額な税金が課せられているため、従来から脱税の温床となってきたが、1990年に脱税防止を目的として軽油周辺油種に識別剤・クマリンが添加されて以来、悪質な軽油ブローカーと自治体税務当局との脱税手法を巡る壮絶な“いたちごっこ”が繰り広げられてきた。
 まず識別剤添加で単純混和が困難になると、代わって、地方税法上は軽油、関税定率法では粗油とされる製品を輸入し、通関時の軽油としてのチェックを免れる“粗油事案”が発生。さらに、保税地内でダミー会社への輸入軽油の転売を繰り返し、納税主体を把握し難くして徴税を免れる「輸入パターン」が登場した。
 その後、地方税法改正により「輸入パターン」が困難になると、今度は特徴者の名義を使って未課税軽油を購入し、税を上乗せせずに安値で販売する「特約パターン」が登場。「借金を肩代わりしてやる」などと特徴者に名義貸しを持ちかけ、販売後は資金繰り悪化などを理由に善意の滞納者を装うという手口だ。
 そして、一部自治体による特徴者資格の厳格化や、自治体、警察、石油組合が一体となった広報活動などが功を奏して「特約パターン」が沈静化すると、主流は、硫酸を使ってクマリンを除去した灯油やA重油を混和する手法のみが残った。クマリン除去の過程で生成される有毒な硫酸ピッチが山林などにドラム缶で大量に不法投棄されたため、脱税事案とともに環境問題としても深刻に受け止められ、多くの自治体が石油組合や警察などと連携し「対策協議会」を設置して対応した結果、いまではかなり下火になっている。
 税務当局が20年以上にわたって悪質ブローカーとの“いたちごっこ”を展開した結果、完勝とはいえないまでも税務当局側が常に先手を打てるところまで至れたのは、制度改正と関係機関の連携という2本の太い柱があったからこそだ。そしてその背景に、全石連や石油組合の強い側面支援があったこともまた事実だ。自治体や警察と石油組合が連携することで、ここまで大きな成果に結びついた。その事実は必ず、今後の様々な活動にも応用できるはずだ。

提供元:全国石油商業組合連合会
〒100-0014 東京都千代田区永田町2-17-14石油会館
TEL:03-3593-5751
FAX:03-5511-8870
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE