日刊ニュース

2016.01.08 のニュース

2トップの新年SSビジョン

「もう無益なシェア争いはしない」。年末発売の経済誌に登場したキリン、アサヒのビール業界のツートップ対談の見出しである。
 国内の不当廉売事案で毎年、石油販売業の上を行く件数を記録する酒販業界だが、その大勢はビール・発泡酒の安売りを巡るもので、その大元にあるのが、この2メーカーのシェア争いとされる。昨年4月には、適正な徴税の観点から、過剰な廉売を規制する酒税法改正案を議員立法化する動きも顕在化した。メーカーも、総合小売大手も、酒販専業大手も、地域の酒屋さんも、すべてが儲からない消耗戦から抜け出せないでいるところへ、政治が助け舟を出した格好という。
 「過去20年で25%市場は縮小した」。「シェア争いという個社の戦略ではなく、どうすれば市場全体が伸びるかを真剣に考えないと共倒れになりかねない」。人口減少と若者のお酒離れで縮小する国内消費市場の一方で、アジアを筆頭に伸び行く海外市場がある。海外勢に目を転じると、世界最大手がシェア2位を買収することで合意するなど、企業規模の点で10倍近い巨人が頂点に立つ。酒販を石油販売に、ビールをガソリンに、お酒離れをクルマ離れにそれぞれ置き換えて拝読すると、その類似性に驚かされる。
 「価格ではなく、価値を巡って競争するのが業界の本来あるべき姿」。「シェア競争という負の遺産が業界を短期的な発想中心にし、市場が争に陥りレッドオーシャン化(血で血を洗う競争の激しい既存市場)した。もっと中長期的な発想で、業界を魅力的にしていきたい」。海外市場に打って出ようにも、基盤となる国内市場で消耗戦を続けていては、勝ち目がない。国内市場において安定的に収益を上げ、国内の消費者に新たな価値を創造・提供してこそ、海外勢に伍していける。ガソリンに比べ差別化しやすいと思われるビール・発泡酒だが、これまでの競争を「不毛」と切り捨てている。
 現在4トップの石油業界は来年4月までに2トップになる。その過渡期に際して、シェア確保の血が騒ぐようではいけない。残念ながら年末年始市場を俯瞰すると、そうした兆候が随所に見えた。これからの日本の石油業界を、適正な競争で牽引することこそが2トップの責任であろう。来年4月から始まる2トップが描こうとするSSビジョンを1年前倒しで示してほしい。

提供元:全国石油商業組合連合会
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