2016.01.19 のニュース
“低マージン脱却元年”に
国際原油市況の下落に歯止めがかからない状況となっている。国際原油価格指標の1つであるWTIは、12日の終値でバレル30.44㌦と12年ぶりの安値をつけた。ブレントも30.86㌦と下落傾向で推移している。この欧米での原油先物価格下落の流れを受けて、東京商品取引所の中東産原油先物価格も同日に㌔㍑2万2千円台と約7年ぶりの安値になった。
イスラム教の宗派対立が鮮明となり、サウジアラビアとイランが外交関係を断絶する事態に発展したが、産油国の増産姿勢に大きな変化は見られず、供給不安に至るような地政学的リスクとはならず、逆に中東産油国間での減産に向けた調整が進まず、当面、供給過剰状態が続き、さらに下値を試す展開が続くとの見方が強まっている。
欧米諸国の経済制裁解除後に増産を計画しているイランの供給拡大を受けて、産油国間の市場シェアを巡る争いが激化して、今年前半は弱含みで推移するとみられる。ただ、石油製品の割安感から米国・中国など大消費国では需要が堅調に推移しているほか、高コスト油田が多い非OPEC産油国の減産傾向や米国の生産調整が進み、供給超過は徐々に解消され、年後半から来年にかけて原油相場は反転し、50~60㌦台まで浮上すると、各情報機関やアナリストらが今後の価格見通しを予測する。
原油価格の値下がりに翻弄されるように、国内のガソリン小売価格も下落傾向に歯止めがかからない。4日時点のレギュラー全国平均値は㍑120.4円と、6年7ヵ月ぶりの安値水準となった。量販店が密集する首都圏など各地の過当競争地区では105円前後の価格がまん延しているほか、一部地域では100円割れの実売価格が散見されるなど、採算度外視とみられるような低マージンでの乱売合戦に発展している。
原油安の恩恵がガソリンなどの需要増につながっている米国や中国と違い、日本では低燃費車の普及や若者の車離れ、消費者の省エネ意識の定着化などで、業界が期待するほど需要は盛り上がっていない。にもかかわらず、低マージンでの過当競争体質から脱却できず、相変わらずのシェア争いに明け暮れている。元売再編を控え、各社が経営統合を少しでも有利に進めるためにシェア争いを続けているというようなことがあってはならない。今後の原油価格反騰を見据えた“低マージン脱却元年”と位置づけるべきだ。