日刊ニュース

2016.04.13 のニュース

一方的な環境省VOC対策

 石油販売業界にとって極めて深刻な問題に発展する可能性があるのに、業界側の主張をことごとく否定したうえで、議論を一定の方向に誘導しようとしているとしか思えない会議が行われている。環境省の中央環境審議会自動車排出ガス専門委員会のことである。
 この委員会は現在、揮発性有機化合物(VOC)削減の一環としてガソリンベーパー低減対策の強化を検討している。全石連は昨年9月のヒアリングで「計量機でベーパー回収する方式(ステージⅡ)にすれば1SS平均1000万円前後の新たな投資が必要となる。中小零細事業者が多いこの業界ではSSの廃止・廃業を余儀なくされる」と実情を訴え、「離島や過疎地をはじめ、災害時にエネルギーの最後の砦となるSSがこれ以上、減らないよう特段の配慮をお願いしたい」と強く求めた。
 同時に、石油連盟などとともに給油時だけでなく駐車時や走行時にもベーパーが出ていることなど考慮すると、車自体に蒸気の回収装置を装着するORVR方式の方が低減効果が大きいことなどを訴えた。
 ところが3月29日に行われた同委員会で環境省が用意した資料は、業界ヒアリングで全石連や石油連盟が主張した項目のほとんどを専門委員によるコメントを使って否定し、ORVR方式ではなくベーパー回収型の計量機での対策が最もふさわしいと思わせるような記述で埋め尽くされているのである(1日付1面に詳細)。関係筋によると環境省の原案はもっと露骨に計量機での対応が望ましいと表現されていたため、関係省庁間の折衝でなんとか取り下げられたが、会議そのものは業界の懸念を無視して、計量機対応案で押し切ろうとする説明に終始した。
 この会議にオブザーバー出席していた資源エネルギー庁担当者がたまらず手を上げて発言を求め、石油業界は過去の条例対応による荷卸し時のベーパー回収や、油槽所の密閉性向上などの取り組みでベーパーを大幅に削減した実績が資料に反映されていないことなどを指摘し、居並ぶ専門委員にあらためて真の理解を求めた。
 SSの存廃に関わる大事な議論が、新たな事実や公平なデータ開示がないまま「結論ありき」で進められていることに強い不信を覚える。これは業界の深刻な危機である。この議論は業界全体が注視し、時には声を大にしていかなければならない。

提供元:全国石油商業組合連合会
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