2016.04.15 のニュース
ORVRが効果的かつ合理的
SSで販売している燃料油のうち、SS業界が直面しようとしているVOC問題の対象となるのは、ガソリンだけである。これは、ガソリンの揮発性の高さに起因する。揮発性とは、常温で放置しておいても気化(蒸発)する性質のことで、ガソリンが気化して蒸気となったものがガソリンベーパー。ガソリンの引火点が軽油の45℃に対してマイナス40℃以下と非常に低いのも、揮発性の高さによる。
SSの地下タンクの中でも気化は進むため、時間が経つと気層部(液体で満たされていない部分)はベーパーで満たされていく。そこにローリーからの荷卸しによりガソリンが一気に注油されると、気層部は圧縮され、満ちていたベーパーは通気管を通って外気に放出される。通気管にホースをつないでベーパーをローリーに戻す、いわゆるステージⅠがその対応策であり、首都圏など大都市圏を中心に導入が進んでいる。
一方、自動車の燃料タンクの中でもガソリンの気化は刻々と進行している。SSでガソリンが給油されると、燃料タンク内の気層部に満ちていたベーパーは給油口から一気に外気に放出される。現時点で焦点となっているのは、この、給油時に燃料タンクの給油口から放出されるベーパー対策であり、計量機のノズルで回収するのか、自動車の燃料タンクに回収装置を設置するのかで議論が分かれているという。
ノズルで回収する方法、いわゆるステージⅡは、計量機ごと最新型と交換する必要があるため、義務化されると1SS平均で1千万円前後のコスト負担を強いられる。第2の地下タンク問題といわれるように、再びSSの撤退が急増するのではないかと危惧する声がにわかに高まっているのはそのためだ。
燃料タンクからは、走行時や駐車時にもベーパーが漏出しているといわれ、ステージⅡではベーパーの完全な回収が不可能であることは明白だ。燃料タンク側に回収装置を設置する方法(ORVR)が効果的かつ合理的であることは議論の余地がないはずだが、それが議論になり、しかもSS側が不利になっているところに、行政の“思惑”が見え隠れする。
しかし、SS業界にとっては死活問題である。“思惑”で左右されては堪らない。筋を通すために、そして生き残るために、組織力を結集し、でき得ることをすべて実行したい。