2016.08.05 のニュース
SS網の綻びは社会損失
今年3月末現在の登録SS数は21年連続で減少し、3万2333ヵ所となった。1994年度末のピーク時6万421ヵ所と比べると残存比率は5割強。10年前比で32%減、5年前比でも17%減と厳しい状況が続いている。ここ3年間は、エネ庁の職権で再開見込みのないSSを消除したものも含まれるが、97年度以降は毎年1千ヵ所超の減少ペースが緩まず、04年度には5万ヵ所、10年度には4万ヵ所の大台をそれぞれ割り込んだ。このペースが続けば、2年後には3万ヵ所を下回りかねない。
他方、揮発油販売業者数の減少も続いている。94年度の3万1559事業者に対し、97年度末に3万事業者、10年度末には2万事業者の大台を切り、今年3月末は1万5574事業者まで激減している。なんと半分も残っておらず、約20年の間に「2人のうち1人が撤退」し、1万6千事業者が廃業したという事実は極めて深刻である。
石油業界において、SSが安定供給の要であることに異論はないだろう。ガソリン需要が減少傾向に転じた05年度以降、14年度を除いてSS減少率がガソリン減販率を上回ってきたため、1SS平均販売量は総じて伸びている。よって、供給体制に支障はなく、効率化が進んだとの見方もあるようだが、セルフ化の進展や1SSディーラーの窮状を踏まえると、楽観は禁物だ。
その理由の1つが、SS過疎地の増加。「平時」の安定供給さえ危うい地域が広がっている。もう1つが「災害時」における安定供給への対応。積み重ねられてきた幾多の教訓を振り返っても、地域事情に精通した地場業者の役割は重大で、“最後の砦”としての機能を発揮してきた。SSの店頭作業はもちろん、配達業務を含めて、石油販売業者にしか果たせない大事な仕事を担っている。
それは、身体に例えれば毛細血管のような働きとも通じる。顔の見える人間関係、臨機応変なサービス、SS網から派生するきめ細かな配送体制などに加え、交通安全に対する各種取り組み、警防活動、かけこみ110番、暴力追放・不当要求排除運動、防火・防災対策や消防団への積極関与、さらには自治会や町内会活動等々…。快適な市民生活を送るうえで不可欠な地域の諸活動が次々と並ぶ。地場業者を核とするSS網の綻(ほころ)びは、社会的リスクを高める大きな損失となる。