2016.12.27 のニュース
極少在庫の灯油需給を注視
極少在庫の灯油需給を注視
原油相場変動によるリスク回避と需給調整による収益環境の転換が主目的だったのだろうが、今冬の灯油在庫が少ない。東京都心で11月として観測史上初の積雪、54年ぶりの降雪を記録するなど、過去最速の寒波到来による実需が加わったことで、「製品輸入で対処する」と明言する元売も出ているが、暖房シーズン最盛期を控え、著しく少ない水準にある。
エネ庁統計による10月末の灯油在庫は前年比6.6%減の266万㌔㍑だったが、石連週報の11月26日在庫は23%減の236万㌔㍑で、10月第2週をピークに52万㌔㍑減り、すでに7週連続で取り崩されている。この在庫取崩しのうち38万㌔㍑は東日本で、前年の1月下旬レベルに減少している。
石連週報では今冬の灯油在庫は、10月中旬まで前シーズンの内需不振を引きずって前年比で多い状況が続いていた。それを反映して、原油見合いでの灯油粗利は㍑5円に届かないような惨状で、極めて低い水準に陥っていたが、これを転換するために、本来なら在庫を積み上げ続ける夏場から10月にかけて、元売は灯油生産を前年比2割減の水準に絞り込んだ形跡がくっきりと残る。
こうした元売側の試みによる成果は目を見張るもので、9月末まで4円前後だった京浜海上の灯油粗利は、10月第1週6円台、第2週7円台、第3週9円台、第4週10円台、11月第1週12円台、第2週以降は13円台となり、14円台の現在に至る。生産を絞りに絞ったことで、わずか1ヵ月半で粗利が2倍以上の水準へと上昇したのだ。
その結果、10年前の2006年度比では半分以下の水準の低在庫が出現している。元売も週45万㌔㍑という最大生産に移行している状況だが、今後の気象見通しが寒波に傾くたびに、卸市況は跳ね上がってもおかしくないような状況にあることをSSは肝に銘じておこう。
灯油のSS店頭小売価格の近況は、前年同期よりも平均㍑8.1円安い水準にある。18㍑ポリ容器では150円近い値下がりであるから、他の暖房エネルギーに対して一段と磨きがかかった断トツの経済性をお客様に誇ってよい。ただし、前年同期比で10円を超える値下がりに陥ったままの長野、山梨、岐阜、鳥取などの需要地のSSは、OPEC合意による原油相場のリセットとなったこのタイミングで、ぜひ収益性を再チェックすることをお奨めする。