日刊ニュース

2010.12.08 のニュース

原油90ドル台乗せ新しい局面に ―ユーザー転嫁が急務に―

 原油価格が高騰しており、今までの70~80ドル/バーレルの価格帯内で推移するとの見通しから「80~90ドル/バーレルという価格帯」へ変動してきた。今年度の原油価格は上期は値下がり、下期は値上がりというパターンとなってきたようだ。
 WTIは2日には88ドルであったが、3日には89.19ドルヘと1.19ドルの値上がりで、90ドルに迫っている。期先の明年4月限では90.02ドルと先高となっており、90ドル台に乗せている。一方、ブレントは2日に89ドル台、3日には91ドル台と、すでに90ドルを突破している。ここにきてブレントがWTIよりも割高となっており、90ドル台乗せで2年ぶりの高値となっている。
 原油価格が90ドル台乗せとなれば、新しい局面となり、石油業界(元売、販売業者)としてはコスト増をユーザーに転嫁することが急務となってくる。今年度の上期の原油価格は4月が85ドルであったが、9月には75ドルヘと値下がりした。原油価格の下落でコスト安となり、仕切価格は値下がりしたが、一方、末端市況は、仕切価格の値下がり分まで値下がりせず、歩留まりがありマージンが確保できたため、元売、販売業者とも黒字となった。
 下期は、10月から原油価格が値上がり、80ドルに乗せ、足元で90ドルに接近している。10~11月では仕切価格が値上がり、ユーザー転嫁に取り組む準備に入ったが、その直後に原油価格は下落したため見送りとなった。12月に入って再度、原油価格が値上がりしてきたためユーザー転嫁が急務となってきた。下期はユーザー転嫁の遅れからマージンが減少するなど上期とは逆の状況となりつつある。
 原油価格も90ドル台となれば、次は100ドル説も出てくるが、08年のように原油価格が暴騰に結びつくことはないとみられる。今後の値動きが注目されるが、アメリカの景気も回復には至っていないのと、世界が石油の先物市場を監視しているため、暴騰は回避されるが、どの程度の水準で抑えられるのか予測は難しい。
 08年は1月の100ドルから7月には145ドルとなったが、その後は急落して、12月には30ドル台となるなど乱高下し、世界経済が混乱して不況となった。暴騰の要因は、中東などの地政学的なリスクも発生したが、主に投機資金が商品市場に流れたためであり、先物市場がマネーゲーム化したためで、その反省で各国も商品市場に対する監視を強化している。
 自由競争のもとでは原油価格をコントロールすることはできないが、世界の石油需要は中国、インドの経済発展によって増加しているため、今後も値上がりが見込まれている。
 原油価格は、需給の実態面からみれば50~60ドルであるとみられている。
 産油国の財政面からみれば「60~70ドルで推移することが望ましい水準である」とされている。石油開発企業も、最低でも同水準を確保したいところである。生産している油田の投資コスト、生産期間などで損益分岐点は異なるが、現在の80ドル台であれば利益は十分確保できる。産油国、石油開発企業、元売の石油開発部門は原油価格の値上がりを歓迎しており黒字となっている。だが、元売、販売業者は、原油価格の値上がりはユーザー転嫁が難しいため苦戦している。ユーザーもコスト増を負担することになり厳しい立場にある。

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