2011.08.04 のニュース
エネルギー・環境会議で論点整理 ―大筋では減原発で方向性を出す―
エネルギー基本計画の見直しは、政府(国家戦略室)のエネルギー・環境会議(主要閣僚で構成)と経産省の総合エネルギー調査会の場で検討することになっているが、29日にはエネルギー・環境会議が論点整理をまとめることで先制した。民主党の政治主導の立場からみると、この論点整理がたたき台となり、これから具体的な議論が展開される。
一方、本来ならば議論の中心となる総合エネルギー調査会の開始は、大幅に遅れており、9月頃になりそうである。今回の論点整理については、経産省でも減原発など大筋では容認できる方向であるとみている。総合エネルギー調査会で今後は具体的な検討を行うが、原発を減らすことで化石燃料に転換することになり、そのコストの負担あり方、誰がどこまで負担するかなどの数値を巡っては、対立軸は存在する。とりまとめは年末となりそうであるが、この議論の中で石油業界の意見を反映させることになる。
ただ、菅首相が8月にも退任が予定されており、次の内閣が原発政策にどう取り組むのかは未知数である。新内閣が政策を引き継ぐとしても、今後も民主党政権が続くのか、大迎合になるのかなどと、見通しは難しくなっている。
予算措置も、3次補正予算に織り込むのか、来年度予算に計上するのか、これからの議論となるが、連日、政局絡みとの動きとなっており、予算編成と菅首相の退任の時期と絡むため、ますます不透明となっている。本来ならば来年度予算は財務省からシーリングが提示され、8月末には予算要求が決まるところであるが、予算要求も9月以降に遅れることなる。
論点整理では、当面の電力不足に向けての需給対策と中長期のエネルギー対策をまとめたもので、①原発は安全性が確認された場合は再稼動を進める②中長期的には依存度を下げる③火力発電の復旧、増設で電力不足を補い、再生エネルギーを普及させる、ことにしている。当面(3ヵ年)の需給対策については、すべての原発が停止すれば、来夏のピーク時電力は10%不足する。火力発電による燃料費の増加は3兆円超えのコスト増につながる。電力料金に転嫁すれば、約2割の料金引き上げになると試算している。
エネ研の試算でも原発が全基停止すると発電用の化石燃料消費が大幅に増加、2012年度では11年度比で輸入金額は3.6兆円の増加となると試算している。
今回論点整理は大筋であるが、常識的なものとなっている。数値は示されていないが、脱原発から減原発へと方向を示しており、一般的に受け入れられる方針となっている。その意味では一歩前進したことになるが、予算要求、エネルギー政策の見直しなど、すべての日程が遅れており、政治主導の政策は機能しなくなっている。経産省事務局としては、今のところ打つ手がなく、政治の行方を見守るしか方策がない。
当初は、海江田経大臣の諮問機関である「エネルギー有識者会議」の報告を参考に、総合エネルギー調査器開催する予定であったが、海江田大臣が辞任を表明しており、四面楚歌な状況が続いている。菅首相が退任しないことにはエネルギーの本格的な審議は始まらない。