2011.12.15 のニュース
なぜに石油が最悪なのか
政府税調による来年度の税制改正大綱で、「地球温暖化対策のための税」の導入が明記された。現行の石油石炭税に「地球温暖化対策のための課税の特例」を設け、「CO2排出量に応じた税率を上乗せ」するというものだ。経過措置として、まず来年10月にキロリットル250円(リットル0.25円)、さらに26年4月に250円(0.25円)、28年4月に260円(0.26円)が各上乗せされ、足掛け5年をかけて760円の増税が完了する。都市ガスやLPガスヘの「地球温暖化対策のための税」はトン780円、石炭は670円だ。
キロリットル2040円が原油および輸入石油製品に課せられている現行の石油石炭税は、LPガスは原油起源・国内製品なら原油輸入時にキロリットル2040円、製品輸入ならトン1080円。都市ガスは国産、LNG輸入ともにトン1080円。石炭はトン700円。したがって、28年4月の石油石炭税と「地球温暖化対策のための税」の総額は、原油・石油製品がキロリットル2800円、ガスはトン1860円、石炭はトン1370円となる。「CO2排出量に応じた税率を上乗せ」した結果、こうした数字となるのだが、見かけ上は原油・石油製品が最も過重に見え、したがって「CO2排出量」が最も多い、即ち、地球環境に悪い化石燃料という姿に見えてしまう。ちなみに原油・石油製品1キロリットルは0.855トンであり、石油石炭税と「地球温暖化対策のための税」の合計額のトン換算は3275円。これは石炭の2.4倍、ガスの1.76倍だ。
環境省データでは、原油のCO2排出係数が69.0(ガソリンは68.8)であるのに対して、輸入炭は90.0、LPガスは58.5、都市ガスは51.3と記されている。2税の総額ばかりでなく、「CO2排出量に応じた税率を上乗せ」すると明記されている「地球温暖化対策のための税」部分でさえ、石油は石炭よりも過重となっている。その算出根拠が不明だ。
石油石炭税のルーツが、国内炭鉱対策にその多くを用いた履歴は承知しているが、すでに国内炭鉱はなく、閉山対策も役割を終えている。どんな政策的な配慮かあって、当局は石油をいわれなき悪役に仕立てようとしているのか。これから約5年間にわたって、3度の「CO2排出量に応じた税率を上乗せ」のたびに、石油は地球環境に対するワーストの悪役を演じなければならなくなる。