2012.01.19 のニュース
拡大する石油資源の領域
太陽光発電や燃料電池、次世代車など、技術革新によって、化石燃料を使わない技術、高効率で使う技術の進歩が続く。その一方で、化石燃料の探鉱・開発の領域でも技術革新が続き、大深海や極地ばかりではなく、これまでは採掘が難しく、回収コストがかかり過ぎると考えられていた「非在来型」の石油や天然ガスが、次々と商業生産司能な領域となってきた。
ピークオイル説。石油(原油)生産は釣鐘状の放物線を描き、そのピークがいずれ訪れ、いつかなくなる。石油エネルギーは近い将来、枯渇に向かう、という常識か変わろうとしている。頁岩(けっがん)層を指すシェール層に含まれている天然ガスの採掘は、従来は困難とされていたが、米国で完全に商業化が出来るようになり、これに伴って、石油のこれまでの常識が覆ろうとしている。これは「シェール・ガス」革命と呼ばれている。
油母頁岩(ゆぼけつがん)は「オイル・シェール」と呼ばれ、そこから乾留によって液状またはガス状の炭化水素を生じる。カナダ・アルバータ州で生産が始まった「オイルサンンド」と合わせて、それらから得られる重質原油は、約4兆バーレルと推計されており、通常原油の2倍以上の規模の資源量となる。
21世紀に入って、すでに原油統計の多くには、ベネズエラの可採埋蔵量をサウジアラビアに次ぐレベルに引き上げた「オリノコタール」とともに、カナダの原油埋蔵量を大きく引き上げた「オイルサンド」の数字が反映されており、この3国の石油資源量の大きさが群を抜いている。
いずれも、かつては生産コストが高額で「非在来型」だったが、通常の油田やガス田の「在来型」に比肩し得るコスト競争力を有してきた、と判断されている。まだ経済性が伴わないが、この延長線上には、深海を中心に日本近海にも大量に存在するという「メタン・ハイドレート」がある。
ピークオイル説からの資源枯渇、発展途上国の需要増を踏まえた価格高騰、中東に偏在する地政学的リスク。これらを杞憂に終わらせるような石油系エネルギーの躍進が続く。原発が大きな制約を受けざるを得なくなったように、前提条件が変われば、国策も変化する。脱石油、脱中東を起点としていた日本のエネルギー政策の前提か変わる。その変化が世界で顕在化しようとしている。