2012.03.02 のニュース
再生可能エネルギーを過大評価 ―化石燃料の重要性を欠くことを懸念―
エネルギー政策の見直しの議論が総合資源エネルギー調査会・基本問題検討委員会で進んでいるが、総論から各論となり、数値を織り込むエネルギーミックスの選択肢をまとめる段階となってきた。この春にはとりまとめ、夏には新・エネルギー計画を策定する。
エネルギーミックスの選択肢では、各委員の意見がまとめることは難しいため、電源構成、一次エネルギー供給について、数値で3月9日までに回答を求めている。その結果を14日に開催を予定している基本問題委で紹介するが、原発の構成比では、大きな差が出そうである。だが、原発の電源構成比を決めないと、その後の審議が進まないため、ある程度の方向が出るものとみられる。原発をめぐっては「脱原発」と「原発推進」との対立の調整が難しく、最終的には民主党政権の政治主導により政治決着となる。
今までの議論は原発と再生可能エネルギーの2点が重点的にとりあげられているが、これに替わる石油などの化石燃料の扱い、重要性が軽視されていることが懸念される。化石燃料の供給については、別途に有識者会議で議論したが、この場では、ほとんどが原発問題に終始した。
「原発を廃止して、これを再生可能エネルギーでカバーできる」との意見が環境派の委員から出ている。再生可能エネルギーを安易に期待、評価しているが、技術開発、実用化までのタイムラグ、コスト高などからみて、現実的に普及が可能であるのか検証すべきである。ドイツの太陽光発電などの例をあげているが、ベース電源とはならず、これをバックアップするための火力発電が必要である点も考慮すべきである。「再生可能エネルギーがコスト高であるとの意見は技術発展を考慮していない。支援体制を強化して普及が拡大することでコストも安くなる」と、補助金の支給を求める意見も出ている。
過去においても、日本ではサンシャイン計画で新エネルギーの開発に取り組んだが、コストに見合った成果が得られず断念した。補助金によるバラマキ行政どの批判も出ており、コスト増を誰が負担するのかを冷静に検討すべきである。また、当時は原油価格が下落したため採算が合わなくなった経済状況もあり、コストと経済性を勘案する必要がある。
一方、無資源国であるため、いつまでも化石燃料にたよっていると、新興国のエネルギー需要の増加で供給が不足する。権益を取得しても資源は産出国のものであり、その時の情勢で大きく変化するためエネルギー確保は難しく、安定供給に支障がでるとの見方もあり、コストが高くとも再生可能エネルギーを確保すべきとの意見もある。
日本の技術力、資金力から克服できるという観点から、反原発を旗印に再生可能エネルギーブームとなっている。石油業界も多角化の一還として、再生可能エネルギーの開発販売に取り組んでいるが、あくまでも主力の石油製品販売を補完する新規事業としてである。
太陽光発電は、7月に施行される再生可能エネルギー特別措置法で買取価格が決まるため、この結果で導入が加速するか否かに分かれる。