2012.03.06 のニュース
イラン原油の輸入は大幅減少 ―政府介入なく石油各社の個別対応―
イランの核開発疑惑問題でアメリカは対立を強めており、欧州、日本政府に対してイラン原油の輸入を抑えるよう要請している。経済産業省では、原油の取引きは商業ベースであり、国が介入することはできないとして、石油各社に輸入減を要請することもなく様子をみているが、輸入の減少には期待している。
そのため日本の石油各社の対応が注目されているが、最近のイラン原油の輸入は、大幅に減少している。各社が、アメリカとの関係を配慮したことと、地政学的リスクを回避するため自主的判断で減らしているものとみられる。
1月のイラン原油の輸入は167万KLで前年同月比で22.5%の大幅減となった。全体の輸入量は1941万KLで2%減となっており、イラン原油の輸入シェアは8.6%で、順位はサウジ、UAEに次いで3位となっているが、イラン原油の落ち込みが大きい。
最近のイラン原油の輸入動向をみると昨年11月は101万KLで38%減、シェアは6.2%で輸入順位は5位。12月は164万KLで6%減でシェアは8.6%となり、順位は4位となっている。
イラン原油の平成23年の輸入量は1819万KLで、シェアは9%である。その中身をみるとイラニアン・ヘビー(IH)が8223万KLで圧倒的に多い。同ライトが200万KL、フォローザン・ブレンドが400万KLとなっている。IHは、比較的重質であるが、硫黄分が1.7%とアラビアン・ライト(AL)の1.7%と同じであるため、LSC重油などの生産に適しておりニーズがあるため簡単に減らすことはできない。価格もAH(硫黄分2.8%)より高いが、AMと同水準であり、ターム物として多く輪入されている。各社の対応としては、ターム物を削減することはできず、スポット物を削減しているものとみられる。
最近の輸入数量でみると、減少傾向となっており、今後も減少を続ければ、アメリカに協力したことになる。イランとアメリカとの対立が続いているが、日本としては、無資源国であるため安定供給のパイプを維持するためには、差別することなく、多くの産油国との関係を保つ方針で臨んでいる。そのためイランと日本との原油取引きの歴史も長く、友好関係を継続しながら、アメリカとの同盟関係を強化したいため、政府の立場は難しいところである。
イランに対する制裁措置については、日本は緩和を求めて調整が行なわれているが、政府が介入することなく、輸入実績で減少が証明されることがベターということになる。政府としても介入せずに、自然に輸入が減少することを期待しているふしがある。石油業界としては、あくまでも個別ベースでの対応となっており、各社がそれぞれの立場で安定供給を考えて取り組むことになっている。国内の需要は減少するため原油輸入も減少傾向にあるが、イラン原油の輸入を抑えると、他の供給ルートを探すことになる。ここにきて原油価格は、イラン問題による地政学的リスクの高まり、アメリカの株価の上昇、景気回復の兆候などで需給も締まり高騰している。ここでさらにイラン問題がエスカレートして紛争ともなれば、原油価格は暴騰するため世界の注目を集めている。