2012.03.29 のニュース
原発停止で石油火力にシフト―電力の石油受入は急増が続く―
エネルギー基本計画の見直しは、総合エネルギー調査会で審議されているが、そのほとんどが原発問題に集中しており、石油火力問題は議論されていない。委員からの石油火力の構成比は1%~3%となっており、関心が薄く、専門的な議論をすることなく経過している。それだけ原発問題に集中しており、全体の電力供給の議論は、二の次となっている。
原発は東電の柏崎刈羽6号機が26日に定期点検で稼働を停止したため、現在、稼働しているのは、北電の泊原発3号機の1基であり、5月5日には停止するため、全54基が停止することになる。原発の停止分は、化石燃料(石油、LNG、石炭)の発電でカバーすることになる。
そのため電力の石油の受入は、1月の重油が151万KLで前年比165%増、原油が134万KLで174%増、2月は重油が155万KLで166%増、原油が158万KLで234%増と急増が続いている。今後も原発の停止が続くと石油の受入は増加する。その結果、原発次第で石油の構成比は増加する。
最近の電源構成(10年)は原発、LNGが各29%、石炭が25%、石油が7%となっている。そのため石油業界では、①2020年度の石油火力の構成比を15%にすべきである、②稼働率は17%と低迷しており、既存の石油火力を有効利用すべきである、③老朽石油火力のリプレースを促進すべきである、④平時から一定稼働させるべきである、などの要望を行なっている。07年7月に発生した中越沖地震で柏崎刈羽原発の稼働が停止した際にも、石油火力にシフトして発電用の石油需要が急増したため、供給増で対応した。その結果、製品需給のバランスが崩れ、他の製品市況が下落したという経験から、平時から一定の石油火力の稼働を要請していたもの。
石油火力は、1970年代では60%を占めていたが、73年の第一次石油危機以降、石油火力の見直しが行なわれ、80年代からは原発の推進へと電源構成が変わってきた。その発端はIEAの1979年の第3回閣僚理事会の声明文で「ベースロード用の石油火力の新設、リプレースの禁止」が定められた。日本では、その方針を遵守しており、結果的に30年以上も石油火力の新設がなく、既存設備も老朽化している。この間、石油業界では、緊急時のみ石油依存するのではなく、石油火力の新増設を要請していたが、見送られてきた。その背景には、「脱石油、原発推進」の政策実施があった。
石油のメリットは、貯蔵が容易である、供給弾力性に優れている、などが指摘されるが、デメリットとしては、コストが高い、価格変動が大きい、中東依存度が高い、などがあげられている。だが、緊急時では石油が頼りとなることが実証されている。コスト高については、エネルギー・環境会議のコスト等検証委員会で報告が提示されたが、その試算方式に問題があると反論している。他の燃料が設備利用率80%としていることに対し、石油は10%と低い。これは以前の発電効率で算出したためで、再度見直しを要望している。
だが、石油の構成比を増やす否かは電力会社との取引き交渉で決まる問題である。仮にコスト高であるとしても、安定供給の立場からも一定数量は確保すべきである。