2012.04.20 のニュース
電源構成で石油シェアが大幅増 ―原発ゼロで石油の重要性を評価―
電気事業連合会によると3月の電力10社の重油の受入は144万KL(前年同期は41万KL)で254%増、原油は129万KL(55万KL)で135%増と大幅増となった。2月の重油の受入は155万KL、原油は158万KLとなっており、下期(6ヵ月)では重油が779万KLで全年同期比で169%増、原油は754万KLで230%増となっている。重油は月平均では130万KLとなる。この結果、電源構成での石油のシェアは急増していることがわかる。
2010年度の電源構成での石油は7%であった。その他、原発が29%、LNGが同じく29%、石炭が25%、となっているが、福島原発事故で11年度以降の電源構成は大きくかわる。29%を占めていた原発が5日以降ゼロとなり、原発の減少分を化石燃料がカバーするため、そのシェアは大幅にアップする。
石油は原油とC重油で供給するが、うち原油は生だきとなるため、LS(低硫黄)原油の輪入で対応している。LS原油は南方、アフリカ産に限定されるため手当てに苦慮する上に、高値でコスト高となるが、供給は確保されている。C重油は国内生産と輸入で対応する。東京電力向けの、国内生産物の供給についてはコストが保障されているため赤字とならないが、生産増で対応することになる。国内のC重油の増産は原油処理増に伴い、他の石油製品が供給増になることが懸念されている。
今のところ、製品の需給はバランスを保ち供給増とならず問題はないが、コスモ石油・千葉、JX日鉱日石エネルギー・仙台2製油所が操業を再開したことで、供給余力が発生し予断を許さない状況となる。
当面、電力用の重油は受入増が続くことになるが、石油業界では「常に一定数量の引取を確約して欲しいと要望。「緊急時のみ石油に頼るのでは安定供給を確保できない」と電力サイドに要請している。
現在、審議中の新しい長期エネルギー計画の見直しでは、電源構成における石油のシェアを現行(7%)の2倍となる15%(2020年度)に引き上げるべきと要望している。足元は受入が急増しているため石油のシェアは増えているが、これが一過性のものとなるか、原発の再稼動問題とも絡んでいる。2030年度の長期見通しの議論では、原発を巡って、ゼロから35%という対立が続き、石油の議論は後回しとなっているが、各委員からの回答は、4%と2%となっているが、石油の2%は、現行の計画の2030年度と同じ数値であり、石油業界からみると低い。
今後も化石燃料にシフトするが、コスト面からみるとLNG、石炭一万優先となり、最後が石油となる。石油は供給能力に優れているが、価格が高く変動が激しいデメリットもある。しかし将来的には、シエールガス開発の促進もあり、埋蔵量の増加で値下がりも見込まれている。
福島原発事故により、化石燃料へのシフトが始まって1年。原発は定期点検のため稼働停止され、現在は北海道の泊原発1機が稼働するのみとなった。これも5月5日からは定
期点検で停止するため、全国にある54機の原発がすべて停止する。原発がゼロとなり、今夏の電力需給が逼迫することで、石油の重要性が再評価されそうだ。