日刊ニュース

2012.06.01 のニュース

再生可能エネと火力発電でカバー ―コスト増の負担のあり方が今後の課題―

 総合資源エネルギー調査会基本問題委員会(25回)は28日に開催され、エネルギーミックスの選択肢の中間報告案をまとめた。電源構成比での原発の比率を巡っては、当初より『脱原発派』と「原発推進派」との対立が続いていたが、5月末までにとりまとめる方針に沿って決着をつけた。
 脱原発派の委員が多数参加したことと、会議をインターネット放送するという従来にない新しい方式を採用したことで、審議会は大きな関心を集めた。各委員が積極的に意見が述べたこともあり、多くの選択肢が提示され、一本にまとめることは困難を極めた。よって最終決定は政治判断に委ねることになった。この選択肢を内閣府のエネルギー環境会議に提示するが、さらに中央環境審議会、原子力委員会の報告と合わせて審議し、決定することになる。その後に広く国民的な議論が行なわれる。選択肢は、①原発をゼロ、②原発を15%、③原発を20~25%、となり、「原発35%案」が除外となった。また「数値を示さず市場メカニズムに委ねる」との選択肢は④案となった。2030年を目標として、原発ゼロ案は「意思を持って原発をできるだけ早くゼロとする」。15%案は「原子炉規制法の改正(廃炉40年)が運用され、新増設が困難な状況が続くことになり、結果的には15%となる」。20~25%案は「安全基準の再構築を行なった上で一定の比率を維持する。低減するが、エネルギー安全保障、地球環境問題の解決に寄与する」、としている。
 選択肢の議論は、「初めに原発ありきでスタートしており、各委員は最初から意見を変えることなく最後まで貫いているため、審議される意味がない」、との批判が出ており、原発35%案については「そもそも低減を前提にしている政府の方針に適合しない」として除外された。
 各選択肢は、まず原発の比率を決めて、残りを再生可能エネルギー、火力発電、コジェネに配分することにしているが、コジェネは各選択肢で一律15%としている。そのため残りの85%を再生可能エネルギーと火力発電で配分することになる。原発ゼロ案の場合は、再生可能エネルギーが35%、火力発電が50%。原発15%案は再生可能エネルギーが30%、火力発電が40%となる。
 原発については綿密に議論されたが、他の電源については深く討議されず、再生可能エネルギーが実際に確保可能であるか、現実的な審議が求められている。一方、原発の稼働停止の状況が続いており、今夏は雷力不足が懸念されているが、足元では、原発ゼロでも電力が供給されているため、脱原発派の勢いが強まる状況となっている。
 再生可能エネルギー(太陽光、地熱、風力など)の導入となれば、不安定な電源であるため送電網、蓄雷設備の整備などで巨額なコストがかかる。火力発電は、燃料のLNG、石油、石炭などの安定供給確保策が重要となる。現在、LNG、石油の増量、高騰で日本の貿易収支が赤字となるなど、すでに経済に影響が出ている。コスト試算も出ているが、最終的には電気料金にはね返る。現在も電力料金の値上げ問題が表面化して反対の声が強いが、新しいエネルギー計画が推進されれば、大幅な料金の値上げは必至である。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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