2012.06.19 のニュース
経産省、広域PL整備を推進へ ―石連は低減効果、採算性を疑問視―
総合資源エネルギー調査会総合部会天然ガスシフト基盤整備専門委員会(第5回)は、13日に開催され、国内の広域パイプライン(PL)の整備、地下貯蔵の重要性を指摘した報告書をまとめた。経済産業省では、この報告書に沿って来年度の予算要求、新政策に織り込むことになる。
東日本大震災を機に、エネルギー基本計画の見直しが基本問題委員会で審議され、エネルギーミックスの選択肢(主に原発の電源構成)を決めたが、その中で「天然ガスシフトを始め、化石燃料を有効利用することが基本的方向である」との論点整理を受けて審議を行なっていた。
現在までに全ての原発が停止し、これに代わってLNG、石油火力へのシフトが進み、輸入増から貿易収支が赤字となるなどの影響がでたが、同時に天然ガスの供給確保、国内の供給基盤の整備が求められた。
海外での天然ガス開発には、経産省もJOGMECに補正予算、今年度予算の増額を計上して支援する体制を整えた。国内の供給体制の強化として、今回の報告書では広域PLの整備として、Aルート(横浜~知多)、Bルート(姫路~北九州)、Cルート(長岡~桶川)、Dルート(長岡~彦根)を想定してコストを試算している。
この広域PLネットワークを構築した場合はLNG基地間のガス融通により176億円/年、地下貯蔵施盤用によるLNGタンクの投資回避で160億円、CO2削減で29億円の効果がある。これらの効果とPLによる事業収入の託送料、約387億円/年を合算するとその総額は30年間で約1兆7900億円となり、概ね整備コストと同程度となる。
整備コストは、地下貯蔵を含め1兆6900億円~1兆9600億円と試算している。
また、供給セキュリティ向上、天然ガスの利用可能性の効果も想定され、これらも加えると全体として整備コストを上回る収入、社会的効果となる可能性がある。ただし、民間での投資判断は難しいと断っている。
一方、石油連盟では、政府による支援策としての広域PL整備、燃料転換策、税制優遇措置、備蓄義務の免除、などに対して天然ガスのみを優遇する措置は、石油などのエネルギー間の公平な競争を阻害するとして是正を要請している。とくに広域PLの整備には、その投資効果について、①価格低減効果が得られるのか、②セキュティ効果が得られるか、③採算性の見通しが甘く多大な国民負担をもたらすのではないか、との疑問点をあげ、政府支援は最小限に止めるべきであると要望している。
さらに、「LNGの輸入価格が割高となっているが、単なる調達価格の差であり、輸入基地の変更、輸入ロットが大きくなるだけで輪入価格が下がるのか」、「広域PLの整備は、家庭用などの最終消費者への供給確保に寄与しないのではないか、セキュリティの効果の真偽を含め、定量的分析を行なうべきである」、「コスト試算は、石油系燃料からの転換、天然ガスコジェネの普及、託送料金収入など、事業収入の見通しを慎重に評価すべきである。事業収入、価格低減効果などの見通しが不透明の中で2兆円の設備投資の採算性は確保できるのか」、など多くの提言・疑問をなげかけている。