2012.07.03 のニュース
資源戦略 天然ガスシフトを優先 ―供給確保と調達コスト低下をー
経済産業省は「資源確保戦略」を策定した。この戦略は08年3月の閣議了解を得た「資源確保指針」と、昨年12月のエネルギー・環境会議で定めた「資源の安定的な確保のための取組みも一層強化する」ことを受けたもので、現在、審議中の新しいエネルギー基本計画に組み入れ、実現を狙う。来年度の新政策、予算要求への織り込みを想定している。
基本戦略は、①資源獲得のための政府一体となった働きかけ、②資源国に対する協カパッケージ化、③資源権益獲得の資金供給の機能強化、などをあげている。従来の資源確保の方針を踏襲しているが、原発の稼働停止から、特にLNGの重要性が高まっており、天然ガスシフトが重点策となっている。当面は石油、LNGの供給確保を図るが、原油、LNG価格の高騰で調達コストが上昇したことから、貿易収支が赤字に転換する状況となり、新たな問題点となっている。
また、資源ナショナリズムの台頭や、中国など大消費国による資源確保への取組みが加速している。その結果、わが国の資源の供給確保を難しくしている。国内では、東日本大震災による原発の稼働停止によって、LNG、石油火力へのシフトが進み、化石燃料の輸入が増大したため調逮コストが急増してきた。原油・LNG価格が高騰したため、11年の貿易収支は2.6兆円の赤字となった。31年ぶりの赤字となり、前年に比べると9.2兆円の悪化となった。化石燃料の輸入額は4.3兆円の増加となり、その内訳は原油輸入で2兆円、LNGが1.3兆円、石油製品が0.8兆円、石炭が0.3兆円の各増額となっており、価格要因が4.1兆円を占めている。今年も輪入数量は増加の傾向にある。数量の確保も重要であるが、調達コストの低下が急務となってきた。
日本のLNG輸入価格は10年が11ドル/MMBTU前後であったものが、中東・アフリカ情勢の緊迫化で原油価格の上昇に伴い今年の4月には約17ドルに上昇している。一方、アメリカではシェールガス革命で天然ガスの需給は緩和しており2ドル台で推移している。アメリカは国内で生産しているため低価格となるが、日本は液化や輸送コストがかかるため、大幅な価格差が生じる。そのため大消費国である日本と韓国は、連携して価格交渉力の強化に努めることになり、「日韓ガス対話」を昨年11月と今年5月に開催している。9月19日には、日本主催でLNG市場のあり方を議論するため、JNGの産ガス国・消費国対話を開催する。
LNGの輸入は、11年が7850万トンで前年比850万トンの増加となっている。12年は原発の再稼働がなければ9000万トンとなる見込みである。現在、北米から日本企業が計1500万トンを引き取る権利を確保しているが、輸入開始は2016年以降となる。LNGの輸入となると米国エネルギー省の許可が必要であるが、現在までに承認を得られておらず、3月に、枝野経産大臣がチュー米国エネルギー省長官と会談して協力を求めたところである。
国内では、災害時に備えて広域パイプライン計画を打ち出しているが、そのコスト負担について、石油連盟からは、ガスシフトの名目で政府が支援することは石油との公平性を欠くとして反対している。