日刊ニュース

2012.08.10 のニュース

骨子では石油火力が明記されず ―重要性は認識されるが低い扱いー

総合資源エネルギー調査会にエネルギー基本計画の骨子が提示された。東日本大震災以降、火力発電の重要性が改めて認識されたが、今回の骨子では、石炭、LNG火力の具体策は記述されているが、石油火力については明記されていない。
 論点整理では、化石燃料の有効利用として「原発の依存度が低減する中で火力発電の重要性は高まる。そのため、燃料特性、供給安定性、環境負荷、コストなどを勘案して、石炭、LNG、石油火力をバランスよく活用すべきである。また、最新設備を取り入れつつ、火力発電の新増設、リプレースを進めるべきである」としていたが、骨子の段階で『石油火力』という文言が消えている。最終的には明記するとのことだが、石油業界としては懸念されるところである。
 震災後に電力需給が逼迫した際の供給力確保等の経験から、火力発電の重要性が改めて認識されており、石油連盟では、2020年度のあるべき石油火力の役割を「最後の砦として必要不可決な電源と明確に位置づけ、天災・トラブルなどの緊急時のバックアップ体制を維持・強化するため、平時より石油火力の安定稼働を行なうべき」と提言している。
 具体策として、①石油火力は供給安定電源として公共性が高いため2020年度の電源構成を15%(09年度実績は9%)にすべきである、②現在の稼働率は17%と低迷しているが、既存の石油火力を有効活用すべきである、③石油火力の最新設備か取り入れ、新増設やリプレースを進めるべきである、④リプレース時は汎用性のある原油から生産されたC重油を利用(排煙脱硫を装備)すべきと要望している。
 原発の停止で、足元の石油火力は稼働率がアップしており、石油(重油、原油の生だき)の受入は、10社ベースで月間で200万KLを超え前年の2倍と急増している。この増
加傾向がいつまで続くかは、今後の原発再稼働と絡んでくるが、原発反対運勁が盛り上がりをみせている状況下で、原発構成比率を政府がどのような方針でどう決めるかがヤマ場
を迎えている。だが、政治はここにきて解散問題が浮上、エネルギー政策問題は後回しとなるなど混迷状熊となっており、政局次第では白紙に戻ることも予断を許さない。
 エネルギー計画はまだ骨子の段階であり、今後に調整されるものとみられるが、石油火力の位置づけは、エネルギーミックスの選択肢において、2030年での3つのシナリオ
では5%~6%という低い数字となっている。これは過去の脱石油政策から新増設が行なわれていなかったことに起因し、さらに石油が石炭、LNGに比べてコスト高であること
に要因がある。しかし、災害時、急時に備えて、平時から一定数量を確保しなければ安定供給に支障をきたすことは、震災ですでに経験していることから、熟考が求められる。
 現在稼働している石油火力は、停止中の老朽化した設備であり、今後、新増設かリプレースが行なわれるか否かで状況が変わる。仮にエネルギー基本計画に織り込まれても、実際に石油火力を活用するかは、電力企業の判断となる。一方、石油各社も電力用の石油需要が減少したことから、内航タンカーも減船、油槽所の閉鎖、重油の生産設備も廃棄しているため、計画策定後は後戻りできない。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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