日刊ニュース

2012.08.20 のニュース

原油は100ドルを上回って推移 ―値上げ達成すれば業績回復へー

 石油各社の4月~6月決算が発表され、原油価格の急落で大幅な減益、赤字となったが、通期見通しでは今後、原油価格(ドバイ)を100ドル/バーレル、為替が80円/ドルを見込み、業績回復を図る。各社の売上高、収益は原油、為替の動向によって大きく影響
するため、石油各社の決算は原油価格次第という側面を持っている。
 4月~6月の原油価格は、4月初めが120ドルであったものが6月末には90ドルヘ急落(平均は106ドル)したため、在庫評価損が発生した。加えて国内製品価格が値下がり局面となりマージンが減少したため、大幅な減益となった。平成24年度見通しの5月想定時では原油価格は110ドル~115ドル、為替は80円を見込んでいたが大きく外れた。原油価格の予測は難しいが、決算の見通しを算出するため。足元の数字を目安を基準に決めている。
 通期の見通しは7月末か8月初めの原油相場を参考にして、今後、明年3月末まで100ドルが続くと下方修正している。原油価格が100ドルを超えて推移すれば見通しよりも増益となり、8月値上げが達成されれば4月~6月の不振を挽回して利益が確保できる。原油価格が高騰すれば、在庫評価益、下落すれば在庫評価損が発生するが、原油価格は、石油の需給で決まるのではなく、金融などの先物市場で決まるため、見通しを難しくしている。足元の原油価格は107ドル~108ドルと見通しの100ドルを超えているため、業績の回復が見込まれる。
 原油価格は、中東の政情不安による地政学的リスクで高騰するが、欧州の金融不安が深刻化すれば下落する。さらにアメリカの景気が回復すれば石油霊要が増加して値上がり、中国の景気、他の金融商品の相場とも絡む。原油調達は自社の生産パターンに見合った油種を選択するが、価格面では打つ手がない。原油価格は国際マーケットで決まり、値上がりすれば国内マーケットから回収するしか方策がない。
 そのため元売としては、原油価格と為替というコストの変動に敏速に対応する。これにマージン(精製費、販売管理費など)を加算して販売し、利益を確保することになる。この製品マージンの確保は、国内の市況反転、先物市況)に左右されるため、適正なマージンを確保するには、供給過剰を避けて需給をタイトにする必要がある。
 しかし、原油価格が値下がり局面となると、国内の石油製品市況は、先取りして下落することになり、マージンが減少する。原油価格が下落しても、実際に日本に輸入され、生産されるのは1ヵ月以後である。国内市況は値下がりしているが、現在処理しているのは、値下がりする以前の高値原油であるため、マージンが減少、または逆ザヤとなり赤字となるケースも出る。この状況は原油価格が値上がりに転じれば、在庫評価益の発生とマージン増加で解消されるが、原油価格が値上がりするまで負債を抱えることになる。
 元売は、新しい価格体系である週決めの市場連動制で対応して、コストの変動をいち早く価格に転嫁している。原油価格の変動と国内市況の形成ではタイムラグがあるため完全
には解消はできないが、状況がこれまでの値下がり局面から値上がり局面に変わってきたため、在庫評価益、マージン増加が見込め、業績回復のチャンスとなってきた。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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