2012.08.22 のニュース
灯油、不需要期での大幅値上げ ―積み増し時期で、今後に問題を残すー
販売業者による灯油在庫の積み増しの時期となってきた。例年シーズン入りを前にして夏場に販売業者、ユーザーが在庫を積み増しするが、今年は原油価格が、ここにきて急騰しており、このまま値上がり続けるのか、いずれ反動で値下がりするのか予測ができないため、現時点での積み増しが最適であるか、判断が難しい状況である。
原油価格の動向をドバイでみると3月では120ドル/バーレル台に乗せ、一時は08年の急騰時のようになるのではないかと懸念されたが、その後は欧州の財政危機が再燃したため急落、6月末には90ドル台となった。その後は反発して7月には100ドル台に乗せ、足元は110ドル台へと値上がりしてきた。そのため仕切価格は8月に入って値上がりとなった。灯油石ガソリンと同様、2週間(11日と18日)の連続値上げとなり、ほぼ同値の各3円、累計で6円の値上がりとなった。
在庫積み増し時期の2週間で6円の大幅値上がりとなると、ここでの積み増しが、高値在庫を持つことになる可能性がある。今後、値上がりが続けば問題ないが、値下がりした場合、差額が負債となる。また、月決め、掛売のユーザーに対して、不需要期での大幅値上げを説得するのに苦慮している。因みに先物の9月限は67円~68円/L、12月限は
79円の先高となっている。
例年の灯油価格は、夏場が安く、需要期の冬場に高くなる傾向にある。そのため安い夏場で在庫を積み増しして、値上がりする冬場のシーズン入りで在庫を取り崩し販売する一」とで利益を確保することが灯油商戦の基本となる。在庫積み増しは、販売(出荷)を開始するまでの金利負担を考慮した上で。利益を見込んで商戦に臨むことになる。
シーズン入りで、まず、夏場の安値在庫分を払い出し利益を確保する。その後、本格的なシーズンに入れば、仕切価格に応じて、マージンを加算して販売することになる。そのため寒波がいつ襲来するか、天候によって販売数量、相場も大きく左右する。震災後は、オール電化攻勢が下火となっているが、都市ガス攻勢などの燃料転換が進んでおり、灯油の増販は難しい実態である。
だが、灯油価格は夏場が安く、冬場が高値となるとは限らない。08年の原油価格の急騰時では、夏場の7月にドバイが145ドルの最高値を記録したが、その後は急落して年末には35ドルとなったケースもあり、連動した灯油価格の乱高下によって、赤字となった灯油販売業者も多くいた。
灯油は、相場商品であり、販売期間が短いため、増販で需給がタイトに推移し、市況が堅訓となれば増益となるが、市況が下落した場合、大損することになる。
昨年は震災の影響によって、冬場の緊急用暖房として灯油ストーブが売れたため、灯油の増販が期待され、早めに在庫の積み増しが行なわれた。だが、実際の販売は予想が外れ、灯油の消費は、石油業界の思惑に比べ伸び悩んだ。昨年度下期の販売は1505万KLで前年比で1.3%増となったが、年間では1962万KLで3.6%も減少することとなった。
今年の元売在庫は昨年よりも低水準で臨んでいるが、今後の原油価格の動向によって、現在、積み増ししている灯油在庫の利益(損益)が決まるという問題を孕んでいる。