日刊ニュース

2012.08.30 のニュース

原発ゼロが多数の調査結果 ―政府の方針決定に影響するかー

 政府による原発依存度のシナリオの決定が9月以降と遅れている。国民的識論に関する検証会合(座長は古川国家戦略担当大臣)で、世論調査、パブリックコメントなどの意見集約も行なわれているが原発ゼロの意見が圧倒的に多く、政府が、この原発ゼロの扱いをどう判断し方針を決めるかが注目されている。
 総合資源エネルギー調査会基本間懸萎員会は、23日に開催され、エネルギーに関す今後の重点策をまとめた。エネルギー基本計画を8月末に決定することにしているが、原発
の依存度を決める政府のエネルギー・環境会議での決定が9月に遅れており、原発以外のエネルギーの重点策を先行して決めている。また、「来年度の経済産業政策の重点策」を決める産業構造審議会を27日に開催したが、原発問題を除いて重点策を決めている。予算要求も30日には民主党に説明する予定であるが、作業は遅れている。国会会期末を迎え、自民党が29日にも問責決議案を提出する動きもあり混迷が予想される。
 このような状況下で原発のシナリオ(①原発ゼロ、②15%、③20~25%)の3案から政府方針を決めることになる。当初、総合エネ調でも15%案が取り沙汰されたが、聴取会、パブリックコメント、世論調査などを踏まえて国民的な識論の展開となると原発ゼロが多数となっている。最終的には政府が責任を持って決めるとしているが、討論型世論調査結果では、原発ゼロが約47%、パブリックコメントでは87%と圧倒的多数となっている。
 一方、民主党も党内に「エネルギー・環境調査会」を設置して、政府の決定前に原発問題について方針を打ち出すことになっている。メンバーには原発ゼロ派が多いため、政府の方針も原発ゼロの方向に圧力がかかりそうである。2030年に原発ゼロとなれば、そのロードマップの提示が求められる。
 いずれにしても原発の議論がスタートした時点で「反原発」と「原発推進」という二項対立ではなく国民的な議論を展開するとしていたものが、結局、対立のまま大詰め段階に入った。世論調査、パブリックコメントでは、原発ゼロの意見が多いことは予想されていたが、圧倒多数となると、その扱いが難しくなる。
 産業界からは、①原発を一定量残すべきである、②電力料金の値上がりで生産コスト増大となり、工場の海外移転が増加、空洞化が促進され雇用問題が深刻化する、③原発から
火力発電に移行するとLNG、石油の輸入増加でコストが増加、貿易収支が赤字となるなど経済に大きな影響を与える、④原発に替わり再生可能エネルギーの導入を見込んでいるが実現が不可能であり、安定供給を重視した議論を進めるべきである、⑤結論を急ぐのでなく3年程度かけて検討すべき、と反論しているが平行線を辿っている。
 国民的な識論の展開については、このような国としての重大政策を、国民投票や人気投票のような方策で決めることは、日本では経験がなく問題であるとの指摘がある。反原発運動が盛り上がりをみせる中、原発問題に強い関心を持ち、パブリックコメントに応募する人は反原発が多いことは予想された。世論調査を参考にはするが、政府の政策決定は国益など、総合的に考えて行なうことになる。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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