日刊ニュース

2012.09.26 のニュース

総合エネ調の再開は遅れる ―政府の原発ゼロを巡って混迷―

 政府は14日に「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」との「革新的エネルギー、環境戦略」を決めたが、その方針に対する反発が出たこともあり、閣議決定に至らず、エネルギー基本計画の策定も遅れることになる。政府の方針を待って、即エネルギー基本計画を策定することになっていたが、18日の総合資源エネルギー調査会は、政府の方針に対して三村委員長が「政府方針の原発ゼロは、目標か否か、何を指すのか明確にしないと識論できない」と発言しており、今後の議論の進め方に至らず終わっている。そのため次期再開については調整中である。
 政府方針では30年代に原発ゼロとしているが、一方では安全確認を得た原発は再稼働を認めており、その場合は原発ゼロとならず、逆算すると15%というシナリオとなるとの見方ができるなど、明確な方針となり得ていない。
 当初の議論の進め方は、総合エネ調でエネルギーミックスの選択(原発の依存度)を審議して、2030年に、①原発ゼロ、②15%、③20%~25%の3シナリオを提示、これを国民的な議論(聴取会、世論調査など)を経て政府が責任を持って8月末に決めるとしていた。この段階で3党合意で消費税の増税が成立、その条件として、「近いうちに解散」が決まり、さらに野党が問責決議を提案、これに自民党が賛成に回り可決、国会は、そのまま閉会した。その後は民主党が代表選、自民党が総裁戦に入り、民主党は21日に野田総理が再選となった。26日に自民党総裁が決まるが、次の選挙で自民党が勝つとの見方が多く、次期総理になる公算が強い。この間、政治空白となったが、「近いうちに解散」を合意したことで、民主党が選挙戦を目論んで「原発ゼロ」を急いで打ち出したとの反発が出ている。
 経団連など産業界が一斉に反対を訴えるなど「原発ゼロ」反対の声も多くなり、流れも大きく変わってきた。原発ゼロ反対の理由として、①化石燃料の価格上昇で電力料金が値上がりとなり、産業の空洞化が雇用問題に発展、国力が低下する、②日本が原発を放棄するとLNGなどの化石燃料が値上がりとなり、調達価格が上昇する、③その結果、LNGなど輸入増、価格上昇で貿易収支は赤字となる、④核燃料リサイクル、使用済燃料対策は決まっていない、などが指摘されている。
 原発ゼロは2030年代と10年先送りとしたが、原発に依存しない社会の実現に向けた原則として、①40年運転制限を厳格に適用する、②原子力規制委員会の安全確認を得たもののみ再稼働とする、③原発の新設・増設は行なわない、との3原則を適用するとしている。
 結果的には、再稼働は認めることになっており、反庭蔵からは「原発ゼロと矛盾する。現在実質ゼロの状況であるため、このまま、ゼロとすべき」との意見もでている。
 さらに、「核燃料サイクルは再処理事業は引き続き取り組む、高速増殖炉(もんじゅ)は研究を実行し、成果を確認の上、終了する」となっていることからすると、原発ゼロと
は矛盾することになる。委員からは、政府の方針は「原発ゼロと15%を足して2で割った案となる」との批判がでている。審識の再開は来週以降になりそうである。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
〒112-0004 東京都文京区後楽2丁目22-3
TEL:03-3814-4728
FAX:03-3814-4745
ユーザーID:
パスワード:
ログインする
e-BISTRADE