日刊ニュース

2012.10.17 のニュース

事故、定期修理で実稼動率は高率 ―今後の増産も供給増に至らず―

 これから需要期に入るため、各社とも増産で対応することになるが、前年比では微増で臨むようである。製油所全体の原油処理能力は448万バーレル/日あり、足元の原油処理は320万バーレル/日で稼動率は72%と低い。単純に引き算すれば設備能力は120万バーレル/日の過剰となるが、事故での操業停止、定期修理などで約90万バーレル/日の停止分を除いた実稼働能力は350万バーレル/日となる。これで計算すると実稼働率は90%を超える高稼働となる。
 これから定期修理が明けると需要増に対応して原油処理がアップするが、350万バーレル/日程度とみられている。事故で停止していても生産余力があり、供給面では安定して推移している。販売が低迷すれば、供給増による需給バランスの崩れが懸念されるが、安全確保を第一に考え、これ以上の事故が発生しないよう再発防止に努める必要がある。
 国内販売は、電力用C重油の増販が見込まれるが、他油種は、微減か横ばいであり、燃料油全体では微増が見込まれている。原油処理も電力用c重油の増販で増産対応となる。だが、大幅な増産で臨むと原油処理増となり、ガソリン、中間留分が連産品のため供給増となる。そのためC重油の生産を抑えて、不足分は輸入増で対応しており需給バランスを保っている。
 電力会社は、原発事故で火力発電にシフトしているが、LNG輸入の長期契約枠の消化を優先しているためC重油が調整材となる公算もあり、増加が続くとみる思惑が外れることにもなる。原発の再稼働は当面見込まれないが、政権交代ともなれば状況が変わってくるため、C重油の需要が今後も続くという見通しは難しくなる。
 いずれにいても製油所の事故が多発しており、安全性の確保が問題となっている。石油連盟は環境安全委員会の下に検討委員会を設けて、これまでの安全活動の効果の検証、現在までの状況をまとめ、事故事例を検証しながら再発防止策など安全確保策をまとめることになっている。
 現在、事故の影響でコスモ石油千葉製油所、JX日鉱日石エネルギー水島製油所などが停止しており、他社の定期修理とも重なっているため、操業停止が多くなっている。定期修理は、事前の計画に沿って実施されるため、在庫の積み増し、他社との融通など事前に計画しているが、事故では想定外の停止となるため、自社の他の製油所で増産して転送するか、不足分を市中買い、輸入増で対応している。そのため転送コストの増加、市中から購入すれば割高となる。輸入も海外市況が高値となるとコスト増で逆ザヤとなり赤字となる。国内生産コストに比べれば、輸入、市中買いは、明らかにコストが高く業績に影響する。
 製油所の操業停止は、減産により全体の需給バランスが保たれ、供給過剰が解消されることで市況対策にはメリットがあるとの見方もあるが、事故はコスト増や安定供給への影響が多大となる。複数の製油所を保有している企業であれば、他の製油所からの供給も可能であるが、製油所ひとつの企業で事故が発生して、操業が長期にわたりストップすれば、企業の存続にも係わることになる。安全対策、危機管理が、石油業界の最大の課題となっている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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