2012.10.19 のニュース
今冬の電力需給対策は万全 ―火力発電でカバーするが油断は禁物―
電力10社の9月の重油受入は144万KLで前年同月比で55%増、原油受入は117万KLで45%増、LNGは451万トンで横ばいとなった。上期(4月~9月)では、重油は785万KLで78%増、原油は704万KLで75%増、LNGは2874万トンで10%増となっている。上期の月平均では重油が130万KL、原油は117万KLとなり100万KLをオーバーしている。
ちなみに、東日本大震災前の平成22年度の上期重油の受入は323万KLで月平均は54万KLとなるため2・4倍、原油は240万KLで月平均は40万KLと約3倍となっている。LNGの受入は2157万トンであったため、約700万トンの増加となっている。
このように、震災後の原発稼働停止を受けて、石油、LNG火力が急増している。石油、LNGの輸入価格が高騰したことに加え、輸入増加で貿易収支が赤字となる状況となり、日本の経済にも大きな影響を与えることになった。調達価格の引き下げが喫緊の課題となっており、日本の価格交渉力が問われているが決め手はない。
原発の稼働停止で火力発電にシフトすることになり、化石燃料の輸入が増大するため、ますますコスト増が続くことになる。日本による輸入が増加すれば、海外の化石燃料の需
給が締まり市況が高騰するという悪循環が繰り返される。原発に替わり、再生可能エネルギーの開発、普及を推進しているが、これには時間がかかり、また、コスト増を国民が負担することで、エネルギー高価格時代に突入したことになる。
当面のコストを引き下げるには原発の再稼働となるが、この問題は議論もできない状況ある。2030年代で原発ゼロを目指すとの基本方針を巡って、閣議決定ができずエネル
ギー基本計画の審議を中断しているのが実態である。この現状で、原発は大飯原発(関西)を除くすべてが停止しており、関西電力以外では、原発ゼロの状況が続いている。
一方、電力需給については、今夏も節電で乗り切り、停電、計画停電という事態は回避した。今冬も電力各社から需給取組みの報告を求めており、予備率は低いが問題はないと
の数字が示されている。不況、節電による電力需要の減少もあり、今冬を乗り切ることができる見通しとなっている。この調査時点で電力不足が表面化することになれば、供給不
安が先行してパニックとなるため、供給不足という数字を出すことはない。節電と火力発電で乗り切る見通しが立ったことで公表に至った。
だだ、厳冬となり、電力需要が見通しを大幅に上回ることになれば、計画停電もありうる。今夏は節電のみで乗り切れたため、電力会社の需要想定が高すぎるのではないかとの意見もあったが、万全を期した需要の想定であったことになる。
産業界にとっては、電力の供給不足は生産活動が低下するため致命的となる。計画停電のためフル稼働できなければ、取引き先の注文に応じることができず、生産減で倒産とな
る。とくに零細の下請け企業は、計画停電の地域に指定された場合、生産できないリスクが伴うことから親会社からの発注がなくなる。節電対策などしていられない中小零細企業は危機感を抱いている。