日刊ニュース

2012.11.28 のニュース

IEA見通し 米国が最大の石油生産国に ―イラクの増産が石油市場のカギー

 日本エネルギー経済研究所は22日、国際エネルギーシンポジウムを開き、フーフェンIEA事務局長による「2035年の世界のエネルギー見通し」(アウトルック2012)が講演された。毎年、2035年までの長期見通しを改定しているもので、2012年版では『世界のエネルギーシステムの根幹が変容、新しい局面を迎えつつある』と提起している。焦点としては、①米国の石油・ガス生産(シェールガス)復活による世界の構図の変化、②一部の国(日本など)による原子がからの撤退、③風力・太陽光発電技術の利用増大、非在来型ガスの普及などによる再編の可能性、④イラクの石油部門の復興による国際石油情勢の変化、などの点をあげている。
 世界のエネルギー需要は2035年までに3分の1以上増加するが、このうち、60%は中国、、インド、中東によるもので、OECD諸国は、ほとんど増えない。IEAの発足時の1975年は、OECDの需要が3分の2を占めていたが、3分の1にまで減少すると予測されている。今後は再生可能エネルギーへの転換が進むが、化石燃料が引き続き支配的なシェアを占めるとしている。
 米国のエネルギー動向は様変わりし、タイトオイル、シェールガズの開発・利用によって2020年半ばではサウジアラビアを抜き、世界最大の石油生産国となる。この結果、米国の石油輸入量は継続的に減少、北米は2030年頃に石油の純輸出国となる。現在、国内エネルギー需要の20%を輸入に頼っているが、自給自足することになる。
 2035年の石油需要は2011年の8740万バーレル/日から9970万バーレル/日に増加し、IEAの平均輸入価格は125ドル/バーレルへと上昇する(名目ベースでは215ドル超)。
 石油の生産は、非OPECが10年間にわたり徐々に増加するが、2020年以降の供給はOPEC依存度がますます高まる。米国のタイトオイル(シェールオイル)、カナダのオイルサンド、ブラジルの深海油田の増産により非在来型石油が増加することで、非OPECの生産は11年の4900万バーレル/日から2015年以降は5300万バーレル/日へと増加するが、その後は減少して2035年には5000万バーレル/日となる。
 世界の石油供給で伸びるのはイラクとなる。イラクは2020年には600万回/日を超え、2035年には800万バーレル/日超へと増加する。イラクはアジア市場、おもに中国への主要供給国となり、2030年までにはロシアに代わり、世界第3位の石油輸出国となる。イラクの供給増がカギとなり、これがなければ世界の石油市場は逼迫する。
 また、世界の天然ガス需要は増加する。地域によって異なるが、中国、インド、中東では増加、中国の消費量は2011年の約1300億立方メートルから2035年には5450億立方メートルへと増加する。米国では低価格と贅沢な供給を背景に、ガス需要は2030年頃には石油を追い抜きエネルギー柳原で最大の燃料となる。
 また、2035年の世界のガス生産量の増加の半分は中国、米国、オーストラリアとなる。しかし非在来型ガス事業は未だに形成期にあり、その資源の拡がりと品質において不
確実性を伴っている。環境への影響に対する懸念もある。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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