2012.12.03 のニュース
双璧なエネ供給網・SSを守れ
電力値上げ申請が続いた。原発停止で代替燃料費がかさみ、経営効率化努力や内部留保の取り崩しでは「最大の使命である電力の安全・安定供給に支障をきたしかねない」と理由付けている。電力料金は、電気を安定供給するための事業体制を維持するために、適正な事業報酬を含めた“総括原価主義”に基づき、政府が認可して決定される公共料金と位置付けられる。
9月に先行値上げした東京電力が前提とした原油価格は、旧来比26%高の117㌦。火力発電の稼働増で燃料費が約4700億円増えるとし、自社火力発電に占める石油依存は2100億円減る一方、ガスが6500億円増加。石炭を含めた費用割合は、石油は41%から25%へ、ガスは57%から73%へと、ガスシフトを鮮明に打ち出した。新料金には再生可能エネルギー固定価格買取制度に伴う“再エネ発電促進賦課金”や、“太陽光発電促進付加金”も含まれる。
さらには「事業者の効率化努力の及ばない」とする燃料価格と為替レートを迅速に電気料金に反映させる“燃料費調整制度”まである。そのうえで、事業報酬率2・9%が確保される構図だ。値上げの発端は福島原発事故だが、電気事業連合会は安定供給を大義とし、原発の継続活用を訴えつつ、太陽光や風力発電の大量導入には課題が多いとも指摘している。
こうした折、北海道で送電網が破壊され、大規模停電が発生。車内で暖を取ったり、灯油を買い求める消費者がSSに並んだという報道も見られた。安定経営が担保された業界でさえ、トラブルは回避し切れない。そんな非常時でも、最も頼りにされるのが石油製品だ。
ガソリンはSSに出向く必要があるが、灯油には配達という入手方法も提供されている。こまめに満タン補給しておけば、家庭や企業のエネルギーセキュリティはかなり高まる。ところが、業界内ではごく一部の業者が仕掛ける消耗戦が繰り返され、大勢が巻き込まれて適正な事業報酬を失っている。
電気やガスに引けを取らない自立分散型エネルギーを取り扱う我々の周囲で、「石油業界特有の燃料費調整制度」∥差別対価や不透明な事後調整などを疑いたくなる事象が消えない。これでは、常に地域中小SSの経営疲弊は止まらない。我慢の限界だ。