2012.12.21 のニュース
灯油高値でマージン確保 ―下期で業績回復を期待―
「灯油高のガソリン安」という価格体系が定着している。寒波の襲来で灯油が増販となり、在庫も低位で推移している。その結乗、需給も締まっており、灯油は値上がりしている。先物、業転市況では灯油は76円/Lであるのに対しガソリンは67円となっており、灯油が9円も高値となっている。ちなみに原油の先物は56円で灯油との価格差は20円と大幅である。この相場からみればマージンは拡大していることになる。系列仕切価格も灯油は80円、ガソリンは76円程度とみられる。昨年は灯油が66円、ガソリンは63円となり、その価格差は3円であり、原油は52円で灯油との価格差は12円となっていた。
今冬の灯油価格はシーズン入りを機に値上がりしている。12月のガソリン仕切価格は値下がりしたが、灯油は値上がりとなっており末端市況でも高値となってきた。
仕切価格の改定をJX日鉱日石エネルギーの月平均でみると、10月はガソリンの2円60銭下げに対して灯油は1円80銭下げ、11月はガソリンの1円60銭下げに対して灯油は40銭下げとなり、灯油の下げ幅が少ない。
元売サイドでは冬場の灯油増販とマージン増を見込んで、下期は利益を確保するという販売方針で臨んでいることになる。今冬は全国的に冷え込みが厳しく、天気予報では厳冬が見込まれている。12月に入って北日本ではすでに大量に積雪しており、東、西日本も冷え込みが厳しくなっている。このため灯油販売は好調で、増販により在庫も低位で推移、需給はタイトとなり、先物、業転市況は先行して値上がりに転じている。
これから年末にかけて灯油販売のヤマ場となり、業務用、家庭用ともに消費が増加する時期となる。家庭用は正月休み用の在庫積み増しがあり、出荷が増加するため供給不足を懸念する向きもあるが、増産、輸入増での対応が可能で問題はない。
元売の業績はJ上期が低調であったため、下期では回復を図るが、決め手となるのが灯油の増販とマージン確保となっている。各社の上期の決算は、4月~6月で原油価格が下落したこともあり、在庫評価損が発生、7月~9月で原油価格は上昇したが赤字か僅かな利益にとどまり、下期での挽回を見込んでいる。例年、下期の需要期に灯油、ガソリンの増販による増益で上期の赤字を相殺し、さらに利益を確保することが石油業界のパターンとなっている。
原油価格は中東産が100ドル/バーレルで推移しており、ほぼ予想通りとなっている。為替は80円/ドルを見込んでいたが、84円と円安となっている。衆議院選挙で自民党が圧勝して、政権交代が実現することになり、10兆円の大型補正予算による景気対策、金融緩和策の推進を掲げたことから為替は84円/ドルの円安となり、株価も上昇してきた。景気回復は消費税増税の条件であるため、新政権も優先して取り込むことになる。石油業界では、景気の回復により石油製品の増販を期待している。
原油価格は9月の110ドル台から足元は105ドル~106ドルへと下落したが、為替の円安で相殺されている。コストは変わらず、仕切価格もほぼ据え置きで推移している。今後、灯油の増販、値取りができれば元売各社の業績は回復する。