2013.02.05 のニュース
規制クリアに向けたSSの努力
油の漏洩防止のための消防法規制強化が、地域のSSの経営存続をこれほど脅かすことになるとは規制当局も想像していなかったのではないか。
地下タンクそのものの入れ換えは膨大な費用が必要だが、その代替策として設けられた既存タンクへのFRPコーティングや電気防食などの工事、さらには精密油面計の設置なども事業者にとっては大きな負担である。国の補助金が創設され、それをテコに多くの事業者が事業継続に希望を持った。
しかし、補助金を受けたとしても自己負担分はかかる。これだけの設備投資を行い規制をクリアしたとしても、現在の収益状況からみて投資に見合わないと判断する事業者が、「廃業」の決断をしている。地域で踏ん張っていたSS事業者の決断に至る様が、各地のテレビや新聞で報道されている。各地の経済産業局への廃業届けがいつごろに提出されるかは不明だが、今年から来年にかけて登録SS数は一気に減少する可能性がある。
そもそも地下タンクの規制強化が行われるきっかけとなったのは2008年5月の参議院総務委員会である。民主党の議員が油の流出事故に対する消防庁の対応を質問。これに対し消防庁長官が「タンクの種類、設置後経過年数等を勘案した流出危険性についての評価手法を開発し、評価に応じた腐食劣化対策を推進していきたい」と答弁した。
その2年後の10年4月、消防庁は「腐食のおそれが特に高いタンク」(設置後概ね50年以上)と「腐食のおそれが高いタンク」(概ね40年~50年)を対象に漏洩防止対策の義務化する改正省令案を発表。2年間の猶予期間を経て12年12月1日に施行される予定だった。
全石連はこの早急な義務付けは組合員であるSS事業者に大きな負担を課すもので、SS経営の存続にも深刻な影響を及ぼすとして義務付けの緩和などを要求した。しかし、10年6月に改正省令が交付された際に消防庁から示されたのは施行期日を2ヵ月後倒しし13年2月1日にするというものだった。
さて、その2月である。規制緩和で熾烈な低マージン競争を繰り広げる中、多くのSSが法令順守のため多くの投資をして漏洩防止対策の工事をした。今後、規制対象となるタンクを持つSSも追加投資か撤退かの重大な決断を迫られている。こうした業界の苦悩する姿を行政や消費者にもっと知ってもらいたい。