日刊ニュース

2013.05.08 のニュース

LNG調達コスト引下げを狙う-供給源多角化で価格競争力を強化-

 経済産業省、外務省、内閣官房、環境省の共同による、「燃料調達コスト引下げに向けた当面のアクションプラン」が策定された。低廉なLNGを確保するため、各省協力のもと、支援策を推進していく。
 福島原発の事故を機に、LNG、石油火力へとシフトしたことで、燃料となるLNG、石油の調達コストが増加した。その結果2011年には31年ぶりに貿易収支が赤字となり、2012年には赤字が6.9兆円に、平成24年度で8.2兆円と過去最大にまで拡大、調達コストの引下げは喫緊の課題となっている。とくにLNGの輸入額は2010年に3.5兆円、2012年には6兆円と増大している。
 日本へのLNGの輸入価格は原油価格にリンクしているため、高止まりの状況にある。だが、米国ではシェールガスの増産でガス価格が下落、欧米との価格差が拡大している。
 燃料調達コスト引下げの具体策としては、①米国からLNG輸入の実現を図る、②供給源を多角化し、売り手間の競争を促進するため、ロシア、米国、カナダ、モザンビーク等での日本企業の開発参画を支援する、③LNG輸入価格の低減が見込まれるプロジェクト(シェールガスの開発、LNG事業)の支援を強化する、④国内におけるエネルギー選択肢の強化のため高効率の石炭火力の導入促進を図る、⑤メタンバイトレートの開発に取り組むなど、多くの対策に取り組むことで、産ガス国に対する価格交渉力の強化を図る。
 米国からのLNG輸入については、民間企業がアプローチしており、3プロジェクトで1500㌧を成約している。米国は、安全保障の立場から石油、ガスの輸出を原則禁止しており、政府の承認が必要となる。2月の日米首脳会談において安倍総理が早期の承認を要請、オバマ大統領から「同盟国としての日本の重要性は念頭に置いている」との発言を得ているが、輸出が認められても2017年以降の実施となる。
 また、米国と平行してカナダ、ロシア、モザンビークでの開発計画が進められている。カナダでは石油資源開発がペトロナスと共同でシェールガスの開発とLNGプロジェクトに参加、2018年に1200万㌧の生産を目指す。出光興産はアルタガスと共同でLNG、LPGのアジア向け輸出・販売に取り組む。2017年に販売を開始する計画である。
 一方、カナダでの増産、カタールでの生産拡大、米国のガス輸出国への転換などから、行き場を失ったLNGは欧州に流れ、価格が低下する情勢となっている。ロシアは欧州における市場シェアが低下、供給増となり、日本への輸出に対する関心が強まり、エネルギー大臣など政府要人が来日している。すでに石炭価格は低下、エチレンなど石化産業への効果が波及するなど、流れが大きく変わるとの見方も出てきた。
 政府の取組みとしては、安倍総理、茂木経産大臣が資源国を訪問、積極的に資源外交を展開している。さらにJOGMEC、国際協力銀行(JBIC)などを通じて支援策を講じており、シェールガス開発、権益買収に別途予算を確保している。また、電源構成において高効率の石炭火力の新増設・リプレースを促進、LNG火力のシェアを抑えることで、LNG価格競争力の強化を図る。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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