2013.07.24 のニュース
WTI急騰でブレントと同値-原油相場に新しい動きが-
原油価格は、エジプトの政情不安を機に値上がりしているが、WTIの値上がりがとくに目立っている。ブレントとWTIが108ドル/バーレルのほぼ同値となり、ドバイは104ドルで推移している。5月の平均でみると、原油価格の低い順からWTIが96ドル、ドバイが100ドル、ブレントが103ドルとなっていたが、ここにきてWTIがドバイを上回り逆転した。さらにブレントと接近、一時はWTIがブレントを上回る状況となってきた。それだけWTIの値上がりが急であり、投資資金が原油の先物市場に流入していることになる。
原油価格の値上がりの要因は、①エジプトの政情不安による地政学リスクが周辺諸国に拡大し、供給に支障をきたすのではないかとの懸念、②アメリカ景気に回復の兆しがみえており、石油製品需要の増加への期待、③株価の上昇に連動して原油価格が値上がりしているなどの点があげられる。
これまでのWTIの相場は、アメリカ国内市況の評価となっており、ブレントなど世界の市場とは乖離したものとなっていた。だが、パイプラインが整備されたことで流動性が高まり、取引高が増加してきたことで値動きが大きくなっている。
原油情勢は、エジプト、リビアなどアフリカ地域の混乱を反映して、ヨーロッパのブレント市況が値上がりした。その後、ドバイが連動する流れとなったが、WTIは、アメリカ国内の需給を反映した別の値動きをみせていたため、ブレントとの価格差は15ドル~20ドルと大幅に拡大した。2月平均ではWTIが95ドルに対してブレントは116ドルとなり、その格差は21ドルとなり、ドバイは111ドルとなっている。
WTIはアメリカ国内市況にとどまっていたが、ここにきて急騰、ブレントに接近してきた。今後、WTIとブレントが原油相場をどのようにリードするか、市場の動向によっては新しい動きが出てきそうである。日本の輸入原油価格に影響するのはドバイ、オマーンの中東産であり、WTIとブレントとの市況を後追いして連動するため、今後の市況が注目される。原油相場はWTI(ニユーヨーク)、ブレント(ロンドン)、ドバイ(シンガポール)の順に値動きが連動して影響されるが、世界の景気動向とエジプト、中東情勢などの地政学リスクが重なり合って動くことになる。
今後の原油価格の見通しで値上がり要因となるのは、①エジプトなど政情不安が中東にも波及する地政学リスクが拡大、②中東産油国で政情不安が高まり、原油生産が減少、③需要増加のため需給がタイトとなるなどの要因があげられる。このところの値動きをみると、今年2月~3月は、ドバイでは3月に115ドルまで値上がり、その後は下落して、6月に100ドルを割って97ドルとなった。その後は値上がりに転じ、足元は104ドルと値上がり、為替か100円/ドルと円安でコスト増となった。そのため7月入りでガソリンの仕切価格は、累計7円の大幅値上げとなった。
一方、値下がり要因となるのは、①中国など新興国経済の減速による石油需要の減少、②欧州経済の低迷、財政危機の再燃、③アメリカのシェールガス、カナダのオイルサンドの増産によるガス、石油の供給増などがあげられる。