2013.08.26 のニュース
効率優先の政策の転換を
1960~80年代にかけて、わが国の石油産業と石油流通市場は、石油業法や揮発油販売業法などの主要法律を軸に、ガソリン生産枠(PQ)や灯油の在庫などに係る指導、さらにはSSの建設指導や転籍ルールなど、様々な行政指導によって「安定供給」を確保してきた。しかし、ガソリンの内外価格差の解消をはじめとする国際化の風に煽られ、石油産業に対する規制が見直されることになった。
89年、ガソリン生産枠指導や灯油在庫指導など行政指導が次々に廃止となり、ついには96年の特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)廃止と指定地区制度の廃止を含む揮販法の品質確保法への改正、98年のセルフSSの解禁、01年には石油業法が廃止されたことで、事実上、石油製品の需給調整規制はなくなった。
この一連の規制緩和によって、わが国の石油産業および石油マーケットは市場メカニズムに委ねられ、「安定供給」よりも「効率的供給」を優先する、いわゆる廉価・量販を追求する市場に変わった。そしていま、石油販売業者は再投資することができないほどの収益性の低い廉売競争を繰り広げ、SS過疎地が拡大している。適正な市場環境の構築についても「規制がない」という理由から行政による関与はなくなった。
効率化優先の規制緩和政策によって、わが国のエネルギーの安定供給が危ぶまれるようになった中で東日本大震災は発生した。甚大な被害に見舞われた被災地で、被災者が最も必要としたガソリン、灯油を必死に手回しで供給したのは地場の中小SSだった。SS過疎化がもっと進んでいたら、こうした対応さえも困難だったはずだ。
先月、仙台市で行われた石油セミナーで、作家の神津カンナ氏が「効率的というのは平時の言葉であることを痛感した。被災地では非効率的だと思われていたものによって、救われているものがたくさんあった」と指摘し、被災地取材を通して知った石油の役割の重要性を、改めて強調した。
災害時に備え中核SSなどの施策は確かに進められている。しかし、効率化一辺倒で進めてきたエネルギー政策そのものを変えない限り、SS過疎化はさらに進む。その時は災害時対応も確実にできなくなる。国はいまこそ「安定供給優先」のエネルギー政策に舵を切るべきである。