2013.12.05 のニュース
モーターショーが描いた進路
東京モーターショーが閉幕した。10日間の入場者数は7%増の90万人。会場は平日でも相当賑わっていたし、休日は身動きがままならないほどの大混雑だった。クルマファンの熱は冷めていなかった。人波にもまれながら、親子連れで撮影に興じる姿も多く見られた。リーマンショックの余波を受けた09年に比べると堅調な回復と映るが、4年前の61万人という記録は1956年(60万人)、2年前の84万人は60年(81万人)と半世紀も前の水準で、今回も100万人の大台回復とはならず。91年ピーク時の202万人、6年前の143万人には程遠い。
他方、多様なメディアから情報を得る方法が格段に増えた。会場に足を運ばなくても、関心あるクルマの知識を深めることが容易になった。入場者数だけを評価軸とする時代は去ったようだ。制御系や動力系などあらゆる領域でクルマの電動化が進み、ITを通じて社会と個人がつながるスマートシティ、スマートハウスの世界が描かれている。クルマが新たな価値を持とうとしている。
今回のテーマは「世界にまだない未来を競え」。国内勢を中心とする自動車メーカー各社が、先進の安全技術や環境技術を披露した。内燃機関の徹底的な改善、電動化の加速、運転支援システムの進化や将来的な自動運転への道筋。PHVやEVの展示が一層増加し、EVは短距離移動や小型コミューター的な存在として強調される傾向も見られた。マツダは、スカイアクティブ技術を応用したガソリン・CNG併用方式のコンセプト車を出品、世界的に供給・需要が高まっている天然ガスの利用像を提案した。
そして、15年からの市場投入に向け、カウントダウンが始まったのが燃料電池車。出品はトヨタ、ダイハツの2社にとどまったが、トヨタはマスメディア向け試乗会を実施したほどに完成度は高い。FCVと水素ステーション普及に向けた計画は、自動車・石油の両主要メーカーが共同声明を発表済みで、ステーション100ヵ所程度を目指した先行整備が進んでいる。FCVは航続距離、充填時間ともにガソリン車と遜色ない。「普通に使えるクルマ」であるためには、全国を網羅している普通のSS業者が水素も併給できるようになることが理に適う。一層のコストダウン、運営しやすい仕掛けづくりが欠かせない。