2014.05.29 のニュース
エネルギー基本計画と石油
総(代)会シーズンを迎えた。石油業界の方向性に影響を及ぼす「エネルギー基本計画」について、再確認してみたい。政府が4月閣議決定した第4次基本計画は、原子力発電所事故を招いた東日本大震災の教訓、原油価格の高止まりやシェールガスの登場など、エネルギー情勢を巡る大きな環境変化に対応させていることが特徴だ。前計画では原発推進を核とするCO2排出ゼロ電源比率の向上などを進める中、脱・石油政策が続けられてきたが、震災を機に「石油の重要性」が再認識され、SSをはじめとする“供給網”の社会的役割に注目、その必要性が謳われたことに大きな意味がある。
新計画の中で石油は--内需減少傾向にあるものの、1次エネルギーの4割強を占め、運輸部門の依存は極めて大きく、製造業における材料としても重要な役割を果たし、ピーク電源および調整電源として一定機能を担っている。調達にかかる地政学的リスクは大きいものの、「可搬性が高く」、「全国供給網も整い」、「備蓄も豊富」なことから、他の喪失電源を代替するなどの役割を果たすことができ、「今後とも活用していく“重要なエネルギー源”である」と位置付けられた。また、災害時にはエネルギー供給の“最後の砦”になるため、「供給網の一層の強靭化を推進すること」に加え、「平時を含めた全国供給網を維持する」ため、石油産業の経営基盤の強化に向けた取り組みが必要--とされた。
特に販売業界との関わりが深いところでは、化石燃料の安定的な利用のための環境整備として、SS事業者に「消費者との直接的なつながりを有する強みを生かした事業多様化を進め、地域コミュニティ・インフラとしての機能をさらに強化していくことが求められる」と方向性を示唆し、期待を寄せた。他方、需要サイドに対しても公共インフラとなる自治体、病院、避難所施設等に非常用電源と燃料の準備、事業者・世帯レベルでもマイカーへのこまめな燃料補給や灯油備蓄を促している。
とはいえ、新計画の基本的なスタンスは2018~20年を目途に安定的かつ低コストなエネルギー需給構造を確立すること、徹底的な省エネ社会の実現や再生可能エネルギーの導入加速化を目指すなどとされている。“石油の力”“SSの力”を発揮し続ける覚悟を業界一丸となって共有したい。