2014.06.10 のニュース
タイミング良く新体系へ移行-需給タイトで環境は整備-
新体系に移行したが、ガソリンの仕切価格は1円80銭/リットル(JX、出光)の値上げにとどまっており、通常ベースでの価格改定の範囲内で収まった。元売の方針が出るまではいろいろと憶測もあったが、サイドは今回のコスト変動方式を冷静に受け止め、通常ベースのユーザー転嫁として取り組むことになる。
足元は、過剰設備の処理後、製油所の定期修理の最中であり、需給がタイトという絶好のタイミングでの新体系スタートとなった。販売業者サイドもユーザー転嫁に取り組み、浸透することが期待される。今回の仕切価格の値上がり分の転嫁ができるか否かが、新体系の浸透をみるカギとなる。
元売が市況(業転市況)連動からコスト連動に変更したのは、最低でも原油代というコストは回収できる方式により、現在の赤字解消を狙ったものである。石油製品の販売価格に占める原油代は90%とされており、原油価格を無視した価格体系はありえないとされている。一方では、市況(販売価格)は需給で決まるとの経済原則もあり、今まで業転市況を指標として対応していたが、供給増が続き余剰玉が業転市場に流れ、業転安から一般市況が下落した影響で、元売の3月期決算は赤字、販売業者も価格競争が激化して、マージン減による赤字が続いている。
これでは元売、販売業者の共倒れの危機が深刻化する。そのため設備処理の実施によって需給はタイトになり、業転市況が値上がりすることを前提にコスト連動方式に移行、販売業者も受け入れたことになる。
今後はコスト(原油価格、為替)の変動を反映して仕切価格が改定されるが、原油価格、為替、海外市況などの影響の度合いが判明すれば、コストの変動が明解となり、公平性が保たれるものとみられる。今のところ原油価格、為替が安定しているため、大きな変化はないようである。
今後の問題は、需給がタイトになり業転市況が値上がりして、仕切価格との価格差が縮小されることが実証されるかにかかっている。業転市況と仕切価格との価格差がどこまで縮小されるかがポイントとなる。
この業転と仕切との価格差問題では、公平な取引環境の整備を求めて全石連と元売間での対立が続いている。全石連では、自民党・流通議連による議員立法で公正な取引の確立を求めている。今国会での成立は時間的には無理であるが、総合エネ調石油・天然ガス小委で審議されるなど、政策面からも対応される。法律での規制、エネ庁の行政指導でどこまで徹底できるか不明であるが、ある程度の方向性が出るものと期待されている。
業転問題は、今回の新体系の定着とも絡んでくるが、双方が納得する形で解決することは商取引上の問題であるため難しく、エネ庁が仲に入り妥協案が出て手打ちとなるか、今後の様子をみることになる。全石連と元売との会談も行なわれているが、調整は難航している。
足元では設備処理か3月末で終り、トッパー能力が395万バーレル/日に削減されたのと、定期修理の最中であるため需給はタイトとなっており、新体系定着の環境は整備されている。今後の末端市況の動向が注目されるが、タイミングの良い時期での新体系への移行となったようである。