日刊ニュース

2014.07.11 のニュース

過剰設備解消で新体系は定着へ 業転問題解決への糸口となるか

 6月から実施となった原油コスト連動方式の新体系は定着の方向となってきた。元売サイドは3月期決算でコアの石油事業が大赤字(在庫評価益を除く)となったことから危機感を強め、加えて原油が高止まりで仕切価格が値上げ局面となっており、ガソリン在庫も低位で推移、需給も締まるなど、環境が整備されてきたことが追風となっている。
 現在、石油政策を総合資源エネ調・石油・天然ガス小委で審議中であり、第二次高度化法による設備処理(約40万バーレル/日)が決定、産業競争力強化法での「石油精製業の市場構造の調査報告」では公正・透明な価格決定(取引きの明確化)が指摘されるなど、石油業界の産業構造が問われる状況下で、新体系は新たな試みとして受け入れられる形となった。
 今までの業転連動方式では、減産で在庫が低位となっても業転市況が上昇しなくなり、逆に下落したため原油コストを回収できなくなり元売が赤字となるなど、減産→在庫減→業転の値上がりという経済原則が機能しなくなった。これは予想以上の減販が続いたことに加え、設備過剰状態が長く続き、常に供給増という状況となったことに起因する。需要減に対して設備処理が遅れたことになるが、雇用問題、地元対策、設備処理後の供給体制の再構築などに時間がかかったことがその背景にある。販売業者も含めて、石油業界全体が大幅赤字という代償を支払うこととなった。
 石油協会の調査では「販売業者の約8割がガソリンーロ当たりの利益が1円30銭以下である。特に月間40キロリットル未満の小規模SSは赤字となり、このままでは経営維持が困難となり、SSの過疎化が拡大する」との結果が出ているが、SSの減少は続き、歯止めは効かない状況である。
 今までの週決めの業転(スポット)連動方式による仕切価格の設定は08年10月から実施となり、その後は市場実態に合わせて手直し(ブランド料の引き上げなど)が行なわれた。だが、最終的には設備過剰を背景に業転安となり、仕切価格との価格差が拡大、業転市況の連動方式では原油コストを回収できず元売は赤字となった。そのため最低でも原油コストを回収するための原油コスト連動方式に変更したものである。この方式は、08年9月以前には月決め方式で実施されていたものであり、販売業者には馴染みがある。原油価格の変動が指標となるためユーザーへの説明が容易となるメリットがある。
 業転連動の場合は、業転市況そのものが不透明となっているため、販売業者も市況実態の把握と予測が難しく、市況対策を困難にした。さらに仕切価格と業転との価格差が拡大することになり、全石連では、元売に価格差の是正を求めて。政治ペースでの活動を展開、自民党・石油流通議連を通じて「業転市況を値上げするか、仕切価格を値下げするか、さもなければ業転の購入を自由化すべき」との要望を行なった。公正な取引き確保を狙った議員立法の動きもあるが、この問題は未決のまま今日におよんでいる。
 この業転問題に対して、流通証明の添付、一部でブランド料の引き下げも行なわれたが、これらの対策に加えて、原油コスト連動の新体系の定着によって、業転との価格差が解消されることが期待されている。

提供元:株式会社 石油タイムズ社
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