日刊ニュース

2014.11.17 のニュース

石油とSSの「ミライ」

来週11月18日は、遠くない未来に「水素の日」と呼ばれるようになるかもしれない。世界初の市販燃料電池車(FCV)となるトヨタ「ミライ」がデビューする。同日には、2020年オリンピック開催を見据えた「水素社会の実現に向けた東京戦略会議」、さらにはJXエネが実質主宰する「21世紀のエネルギーを考えるシンポジウム」も「幕を開けた水素エネルギーの時代」をテーマに、それぞれ都内で開かれる。
 経産省・エネ庁も大型の来年度概算要求で、水素の貯蔵・輸送・供給、FCVやエネファーム普及を側面支援する。「みらい」1台に200万円の購入補助というから、ほぼガソリン車1台分の実費、ガソリン税換算では3万7117㍑分、平均的なガソリン車換算では41・3台分が丸1年収めるであろうガソリン税相当額が投入される勘定だ。
 ガソリン税から、あるいは石油石炭税から、間接・直接的に多額の税収が充当されることになる。原油安と円安で9月期では赤字拡大決算のオンパレードとなった元売、さらには円安とダブル増税による「4月ショック」の結果、需要の減少、マージンの減少、資金繰りの悪化の「三重苦」に陥ったSSが、明日からのFCV普及を下支えする構図に映る。今年度2兆円を超える過去最高の純利益を稼ぐ見通しのトヨタを筆頭に、円安の恩恵を最大限に受ける自動車業界の「ミライ」を、困窮する元売とSS業界が下支えする構図には、大いに違和感を覚える。
 現在の石油石炭税が石油税と称していた時代。その税収は、主に国内炭鉱対策に仕向けられ、縮小する石炭産業やその企業城下町、さらには炭鉱従事者の生活などのソフトランディングを下支えした。SS数もガソリン内需もピークアウトし、国内石油業界が衰退期に差し掛かってきた。
 せめて、長年、地域生活者に途切れることなく安定的にエネルギーをお届けし、国や自治体の徴税マシーンとして機能し続けたSSが、今後もその機能を果たす意欲のある者への支援を求めたり、廃業の際に過去の燃料が含有していた成分によって汚れた土壌を回復させるコストの支援をお願いすることは的外れだろうか。水素の時代が開幕しても、当分の間は石油とSSがクルマ社会を支える。その「ミライ」をも支える政策・施策は、一段と強化されてしかるべきであろう。

提供元:全国石油商業組合連合会
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